ムラヴィーンスキイのリハーサル

  • ムラヴィンスキー/レニングラード・フィル リハーサル&コンサート第2集(ロシア音楽編) (Altus ALT127)
少し前のことになるが、昨年11月末のことだったか、「30時間限定! クラシック発売済・輸入盤CD全品40%オフ!」というメールがHMV ONLINEから届いた。せっかくの機会なので、コストパフォーマンスの観点から長らく買いそびれていた大物を注文した。

9枚組BOXの内容は、以下の通り:
  • チャイコーフスキイ:交響曲第5番
    • リハーサル(1973年4月25日[第1、2、4楽章];26日[第3楽章])【CD1】
    • コンサート(1973年4月29日)【CD8】
    • コンサート(1982年11月6日)【CD9】
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
    • リハーサル(1973年4月26日[第1、2、4楽章];5月3日[第1、2、3、4楽章])【CD2~4】
    • セッション(1973年5月3日)【CD7】
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第6番
    • リハーサル(1973年5月4日[第2、3楽章])【CD5】
  • リャードフ:「バーバ・ヤガー」
    • リハーサル&通し演奏(1973年5月3日)【CD6】
  • グリーンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
    • リハーサル&通し演奏(1973年5月3日)【CD6】
  • プロコーフィエフ:バレエ「ロミオとジュリエット」第2組曲より
    • コンサート(1982年11月6日)【CD9】
リハーサルと本番とを併せて聴くことで、ムラヴィーンスキイとレニングラードPOの音楽が、いかにして生み出されたかを知ろうという企画である。第1集はベートーヴェンとブラームスの共に交響曲第4番を中心としたもので、そちらも興味がなくはないのだが、この第2集にはショスタコーヴィチの交響曲が収録されている以上、こちらを優先するのは当然のことである。音源は、CD8のチャイコーフスキイ以外は全て初出。

リハーサル部分には細かくチャプターが打たれており、対訳を見ながら聴く上での配慮がなされている。話し言葉の日本語訳には意味がはっきりしない箇所も少なくないが、オーケストラでの演奏経験がある人ならば、大体の雰囲気を知るのに支障はないだろう。細部の厳格な調整は、アマチュア並みのリハーサル回数が確保できた旧ソ連時代ならではの、時間をかけた緻密さが印象的である。こういう部分は、アマチュア奏者にとって非常に勉強になるし、また刺激にもなる。一方、奏者を個人の名前で呼んだりしていて、全体にアットホームな雰囲気が漂っているのは、ちょっとした驚きだった。気心の知れた仲間で、決まったレパートリーを存分に時間をかけて深化させていったことが垣間見えるような気がする。

また、リハーサルでは当然ながらパートを抜き出して練習したりしている訳だが、これが思わぬ美しい響きだったりして面白い。たとえば、ショスタコーヴィチの第5交響曲の終楽章コーダを金管楽器だけで演奏したところなどは、この箇所が勝利なのか悲劇なのかはさておき、Tuttiの演奏では気づかなかったような荘厳な美しさに、息を飲んだりもした。

本番(?)の通し演奏は、ほとんどが初出音源であるとはいえ、ムラヴィーンスキイにとってはお馴染みのレパートリーなので、同じコンビによる他の録音と、細かな違いはもちろんあるものの、基本的にそう大きな印象の差はない。ショスタコーヴィチの第5番はセッション録音だが、商品として完成されたものではないので、細かいミスが散見される。録音状態はこの時代の彼らの音源としては上質な部類であり、総合点でこの演奏を高く評価する聴き手もいることだろう。なお現在は、CD7がALT191、CD9がALT192として分売されている。ただし、HMV ONLINEのレビューによると、CD7の第4楽章と分売された盤とでは編集が異なるらしい(僕は確認していない)。

このセットについては、リリース直後から賛否両論があったようだ。初出音源が高額なBOXでしか入手できなかったこと(これは、上述の分売によって解消された)などは、確かに顧客に優しいとは言えないだろう。しかし、そもそもリハーサルを音盤で聴こうという時点で、限られた層の聴き手だけを対象とした商品であることは明白で、初出音源もその特典と考えるならば、とりたてて問題にするほどのことではないようにも思う。ただ、繰り返し聴き込むような類の音盤ではないので、セットの内容に相当の思い入れや興味がなければ、やはり定価(?)では手を出し辛いのが正直なところだろう。

“40%オフ”でも安いとは思えなかったが、貴重な資料として架蔵する価値は十二分にあった。他人にも積極的に薦めようとまでは思わないが。

HMVジャパン
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏家_Mravinsky,E.A.

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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