カルテットという名の青春

  • カルテットという名の青春 ~太郎、マドカ、麻理子、大と歩いた1371日~ (録画 [BS朝日(2011.10.9)])
10月8日の読売新聞朝刊を読んでいたら、その翌日に放送予定の弦楽四重奏を志した若者達のドキュメンリーが紹介されていた。BS朝日で放送されたこともあってか、見逃したというよりは、こういう番組があったことに気付きすらしなかった人も多かったようなので、録画できたことは実に幸運であった。BSの番組欄を気にかけることなど普段はまずないだけに、まさに天の与えと言うべきだろう。

“カルテット”をやることに対する、どこか肩に力の入った自負は、念願叶って四重奏を結成したことのある者ならば誰もが記憶にある独特の高揚した気分だが、番組冒頭における4人の若者達が皆その状態にあるのが、どこか微笑ましい。一流音大を卒業したばかりの前途洋々たる4人の弦楽器奏者達が、四重奏に身を投じる誇りと使命感の一方で、音楽家としていかに成長すべきか苦悩し、悪戦苦闘していく様には、強く惹きつけられた。

ありふれたハッピーエンドではなく、四重奏団の活動休止という決断を下すに至る過程が、音楽を職業として選択することの厳しさや困難さを生々しく描き出している。タカーチによる最後のレッスンは、ベートーヴェンの第12番の第2楽章ということもあって、偶然とはいえ思わず感情移入して観てしまったが、とても感動的なものであった。わずか4年ほどの間に、音楽とこれほどまでに濃密に向き合った彼らが、今後さらに大きく発展していくことを願う。

音楽の“自由さ”が、彼ら(特に第1Vn奏者)の直面した音楽的な壁であるという描写であったが、そこで少し惜しいと思ったのは、日本では技巧的な精確さのみが要求され、ヨーロッパでは自然に身につけることのできる自由な音楽を習得することができない、という紋切り型の主張に終始したこと。音楽芸術というのは、そもそもが口承によって伝統が形成されるものである以上、いわゆるクラシック音楽の発祥地であるヨーロッパと、そことは全く異なる文化圏にある日本とを単純に比較すること自体がナンセンスだろう。ヨーロッパに留学したり、そこで生活したりするだけで、日本人がヨーロッパ人になるわけではない。日本人がクラシック音楽をすることに対するある種の葛藤は、ドキュメンタリーのテーマとして非常に興味深いものではあるが、それを的確に描くことはそう簡単でない。

とはいえ、芸術を生業として極めていこうとする若者達の真摯で情熱的な姿は、広く共感を得ることだろう。カルテット好きはもちろんのこと、音楽に少しでも興味のある人には是非とも観てもらいたいドキュメンタリーである。BSなので、再放送の機会も少なくないはずだ。
スポンサーサイト

theme : クラシック
genre : 音楽

comment

Secre

ブログ拝見させて頂きました。

管理人様
始めましてshigeoと申します。
実は昨日、BS朝日で『カルテットという名の青春』を偶然に見て感動しました。
もう一度再放送しなか?と思ってネットで調べたところ、どうやら昨日のが再放送の様でした。

動画等UPされてないか?色々調べてたところ、このブログにたどり着きました。
無理を承知でお願いがあるのですが、
もし可能ならダビング等していただけないでしょうか?

お手数ですが、
お返事の程お待ちしております。
プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最新記事
カテゴリ
タグツリー
★ トップ(最新記事)
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
人気記事ランキング
RSSリンクの表示
リンク
音盤検索
HMV検索
検索する

音楽関係のブログ(リンク・更新状況)
PopUp WikipediaⅡ
記事中の気になるキーワードをマウスで選択してください。Wikipediaからの検索結果がポップアップ表示されます。
Wikipedia
developed by 遊ぶブログ
Translation(自動翻訳)
FC2カウンター