【ニコニコ動画】フェドセーエフのショスタコーヴィチ3種

いささか遅ればせながら、訃報を一つ。ショスタコーヴィチ研究家として著名なマナシール・アブラーモヴィチ・ヤクーボフ氏(1936~2012)が、去る2月5日にご逝去された。DSCH社の新全集では、既刊のほぼ全てで解説や校訂報告を執筆されていた。ご高齢であったものの大往生と言うには少し早く、何とも惜しまれる。自筆譜をはじめとする一次史料を丹念に読み込むことで構成された緻密な論文を、これからは読むことができないと思うと、いかに後継者たる優秀な研究者が活躍しているとはいえ、大きな喪失感を禁じ得ない。立て続けにK. ザンデルリンク(1912~2011.9.18)やベリルンド(1929~2012.1.25)の訃報に接したこともあり、つくづく自分も歳をとったものだと、寂しい気持ちになる。ご冥福をお祈りいたします。

さて、本題。ニコニコ動画に、フェドセーエフ/モスクワ放送SOがウィーン楽友協会大ホールでショスタコーヴィチの交響曲を演奏した時の映像がアップされていた。第5番・第10番・第15番の3曲で、嬉しいことにいずれも全楽章が揃っている。

どの曲においても、オーケストラの高い機能性が際立つが、多くの優秀な首席奏者が長年に渡って在籍していることによって、この水準が保たれているのだろう。ソ連時代以前に比べるとかなり洗練されていることは確かだが、ロシア以外の何物でもない響きは、音楽的な伝統が最良の形で継承されていることの証でもあろう。もちろん、フェドセーエフとの長い関係も忘れてはならない。淀みのない、それでいて彫りの深い音楽は、近年では他に類を見ない指揮者とオーケストラの関係の賜物である。

第5番は、彼らも数え切れないほど演奏してきた作品であろう。僕も、1999年に大阪で彼らの実演を聴いたことがある。技術的な不満があろうはずもなく、颯爽としたフェドセーエフの解釈にも揺らぎがない。お手本のような演奏といってよいだろう。とりわけ第2楽章の格好良さは、彼らならではのもの。惜しいのは、第3楽章の後半辺りから、どこか緊張感が失われてしまっているところ。破綻はないものの、第4楽章も今一つ盛り上がりきらない。

第1楽章第2楽章
第3楽章第4楽章
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
フェドセーエフ/モスクワ放送SO(2011年9月25日)


第10番も、西宮で彼らの実演を聴いている(2006年5月29日のエントリー)。この曲にもフェドセーエフの個性的な解釈が聴かれるが、曲との相性が良いのか、そのほとんどに違和感はない。オーケストラの首席奏者も、大多数が西宮公演時の顔ぶれと共通しており、かつての感動や興奮がそのまま甦ってくるような映像である。ここにアップされている3曲の中では、演奏の出来が最も良い。

第1楽章第2楽章
第3~4楽章
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
フェドセーエフ/モスクワ放送SO(2011年9月26日)


第15番を映像で観ることができるのは嬉しいが、この曲に関しては、フェドセーエフの解釈に違和感が残る。とりわけ第1楽章と第3楽章の鈍重なテンポは、明らかに意図を持ったものではあるが、僕がこの曲に抱くイメージとは異なる。ただ、第4楽章のクライマックスに向かう長大なクレッシェンドは、このコンビにしか成し得ないであろう、独特のしなやかさを持った素晴らしいもの。

第1~2楽章第3~4楽章
ショスタコーヴィチ:交響曲第15番
フェドセーエフ/モスクワ放送SO(2011年9月27日)
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏家_Fedoseyev,V.I.

comment

Secre

No title

ヤクーボフ氏亡くなられましたか。10年ほど前に京都芸大で講演された時に聞きにいったことを思い出します。一柳さんが通訳されていましたが、今となっては講演の内容を思いだせないのが辛い。メモを一度探してから、氏の業績を偲びます。

私も10番を西宮で聞いたのです。いまだに心に残る名演でしたし、アンコールもしゃれた曲を選んでいて見事。 有難うございます。
プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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