現代の「森の歌」&「バービイ・ヤール」

先日、シュペーテQの次回公演に備えて、森悠子先生のレッスンを受けた。ラヴェルの四重奏曲の第1楽章と第3楽章だけに絞ったが、3時間以上に及ぶ熱心なご指導をいただき、大いに勉強させていただいた。我々の水準を十分に踏まえつつも、音楽的な要求に対して妥協することはなく、加えて我々の個性らしきものまで生かしてくれる、最高級のレッスンであった。音盤などで聴き知っているのと違ってうまくいっていないことは分かっていながら、それなりに工夫や検討を加えても釈然とせずに解決できなかった多くの箇所が、わずかな指摘で見違えるように形になっていくのは、まさに魔法のようですらあった。技術上の具体的なコツの伝授もさることながら、テンポの設定からフィンガリングに至るまで、音楽的な演奏を作り上げるための理論的に明確な基本原理が存在することを教えていただいたことが、今回のレッスンの最大の収穫だったように思う。

レッスン後の雑談の中で、ボウイングの世界的な潮流はすっかり変わっていて、かつてのように均質なものではなく、アーティキュレイションをくっきりと浮かび上がらせるような類の流儀が主流になっているのだと聞いた。それに対応していかなければ、欧米のオーケストラのオーディションを通ることも難しくなっているらしい。

漠然と感じていた現代風の演奏の特徴は、なるほどこのように技術的見地から明快に説明できるものかと、目から鱗が落ちた気分。とはいえ、音楽現場で活躍しているプロの方々にとっては、何をいまさらということに違いない。いくら関心を持って勉強しているつもりでも、所詮は素人ということだ。学ぶべき事柄は尽きない。

ニコニコ動画にアップされている「森の歌」は、さしづめ現代風のショスタコーヴィチ演奏の典型と言えるだろう。重厚な音の壁が聴衆をやみくもに興奮させるのではなく、繊細な音の線の絡みが聴き手の心の襞を撫でるかのような優しい熱気が心地よい。こういう解釈が可能であれば、少なくともロシア語の通じない地域では、今後も「森の歌」が演奏される機会が失われることはないだろう。

第1~5楽章第6~7楽章
ショスタコーヴィチ:オラトリオ「森の歌」
ヴォロパエフ (T)、レイフェールクス (Br)、ペトレンコ/フランス放送PO他(2012年2月10日)


YouTubeにアップされている交響曲第13番も、フレーズの細部がよく動く現代流儀の演奏である。僕の脳裏に刷り込まれた「バービイ・ヤール」に比べるとかなり軽量な印象であるが、このスタイルでこそ明らかになる響きの美しさは極めて魅力的。

ショスタコーヴィチ:交響曲第13番
アレクサーシキン (B)、スロボデニューク /オランダ放送PO他(2011年4月3日)
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏活動_DasSpäteQuartett

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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