『バイエルの謎』(音楽之友社, 2012)

音楽ジャーナリスト渡辺和氏のブログ5月27日のエントリー)を見て、居ても立ってもいられずに書店へ足を運び、一気に貪り読んでしまった。

僕自身はピアノを習ったことがないので、本書の冒頭で触れられる「バイエル批判」は知っているものの、具体的に何がどのように批判されたのか、あるいは何がその批判に値するのかということは理解していない。もちろん、「バイエルの○○番」とピアノのお稽古の進捗状況とがリンクすることもない。にもかかわらず、この本の群を抜いた面白さには、ただひたすらに引き込まれた。

実は、大学に入って間もない頃、せっかくサークルのBOXにピアノがあるのだからと、部屋に転がっていた古ぼけたバイエルを開いて、ピアノを練習しかけたことがある。たぶん全音楽譜出版社のものだったと思うが、その時に「バイエルの原典版っていうのは、一体どこから出ているんだろう?」という疑問を抱いたことを記憶している。どうせなら権威ある楽譜で練習してみたいといった程度のことだったので、一向に上達しないピアノを触ることにも飽きて、いつの間にやらそんな疑問など忘れてしまった。本書は、この素朴な疑問から始まって、バイエルとはどのような人物だったのか、そもそも実在した人物なのか、と話が展開していく。

全ての謎が解き明かされた後で改めてバイエルを眺めてみると、あの“つまらない”教則本から様々な物語や情景が浮かび上がってきて、どの曲も魅力的に響いてくるような錯覚に襲われること、請け合いだ。

近年の音楽書の中でも出色の一冊です。お薦め。

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theme : 最近読んだ本
genre : 本・雑誌

comment

Secre

お礼

お読み下さり、その上、書評まで書いてくださり、本当にありがとうございました。

Re: お礼

ご丁寧にコメントいただき、どうもありがとうございました。

書評なんて大したものは書いておりませんが、とにかく面白いのでお薦めです!ということが伝わればよいと思っております。素晴らしい本をありがとうございました。
プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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