ショスタコーヴィチ:室内交響曲(カントロフ指揮)など

  • ショスタコーヴィチ(バルシャーイ編):室内交響曲、シューベルト(マーラー編):弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」 カントロフ/オーヴェルニュCO (Denon 33CO-1789)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第15番 シュラー/シカゴSO (1979.12.6~8 放送録音)
  • 名古屋フィルハーモニー交響楽団第288回定期演奏会(チャイコーフスキイ(バルシャーイ編):弦楽四重奏曲第1番より「アンダンテ・カンタービレ」、ショスタコーヴィチ(バルシャーイ編):室内交響曲(弦楽四重奏曲第4番)、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番) バルシャーイ/名古屋PO (2003.1.25 録画 [CBC])
私が公開しているショスタコーヴィチのHPは、基本的には自分自身のために情報を整理しているという意味合いが強い。不特定多数に公開している結果として、見知らぬ誰かにとって何らかのお役に立っていることもあるのだろうが、掲載している情報に対する指摘や新たな情報提供など、公開しているメリットも主として私自身が最も享受していると実感している。

中でも、私が見つけられずにいる音盤や書籍に関する情報提供は少なくなく、そのいずれもが私にとって有難いものであることは、今となってはこのHPの存在意義もそれほどなくなっていると思いつつも、漫然と維持し続けている大きな動機であったりもする。

昨年末、それまでにも何度かやり取りのあった方から、私が所有していないCDを中古屋で見つけたとのメールを頂戴した。その方のご厚意で、当該音盤を確保して頂くと同時に、その方が所有されていた録音および録画を視聴させて頂く機会に恵まれた。ここに深謝の意を表すると共に、せっかくなので簡単な感想を書き留めておきたい。

カントロフ/オーヴェルニュ室内Oのアルバムは、確か『ショスタコーヴィチ大研究』(春秋社, 1994)巻末のディスコグラフィに掲載されていたものの、今に至るまで店頭で見かけることのなかった音盤。率直に言ってそれほどの期待感もなく、積極的に捜索に乗り出してこなかった(というより、念頭になかった)こともあり、未入手のまま放っていたもの。一聴して、その怠惰と不見識を猛省。録音当時(1987年)としては相当に進歩的な、現代の演奏流儀に近いアーティキュレイションや音色へのこだわりを持った美演である。併録の「死と乙女」と同じアプローチでショスタコーヴィチをまとめあげていることは、現在ではさして驚くほどのことではないが、まだソ連が健在で、体制寄りの解釈でも『証言』的な解釈でも、おどろおどろしいアクの強い押しつけがましさを持った演奏が主流だった当時において、この種の「純音楽的」な演奏を自然体で実現していたことは、驚異的な先見性と言って過言ではないだろう。良い意味で期待を裏切られた。


シュラーの放送録音は、冒頭に1973年にシカゴで行われたショスタコーヴィチのインタビューの一部が収録されている(これは、ノースウエスト大学の名誉博士号を授与された際に行われた)。この演奏自体は1979年とクレジットされているので、この時の演奏というわけではない。初演からそれほど時間の経っていない演奏ということもあり、楽曲の賑やかさや楽しさといた側面に解釈が偏っていることは否めないが、逆にそれゆえに屈託のない陽気な音楽に仕上がっているとも言え、先入観に囚われていると見過ごしがちな作品のある面を再認識させてくれるという点で、とても面白い演奏であった。

バルシャイ/名フィルの録画は東海地方ローカルでのみ放映されたものであり、寡聞にしてこのような番組があったことすら知らなかった。演奏そのものは、オーケストラの技術的な制約がバルシャイの音楽的な意思と折り合いがつかない箇所も少なくなく、録画で視聴する分には必ずしも手放しで絶賛できる仕上がりとは言えないが、団員の集中度あるいは燃焼度はカメラ越しでもよく伝わってくるので、おそらく会場では舞台から放出されるエネルギーに圧倒されたことだろうと、当日の聴衆を羨ましく思う。この番組の最大の見どころは、ドキュメンタリー部分。バルシャイのインタビューは、他の機会に彼が語っていることと共通している内容が多く、そこに新味を感じることはないものの、リハーサル時の映像が惜しみなく収録されているところが極めて貴重で素晴らしい。バルシャイの指示は技術的な観点のものが多く、捉えようによっては、名フィルの技量に不満を持っているように感じられなくもないが、そうした技術的な細々とした指摘こそがバルシャイの音楽の本質だと私は考えるので、このリハーサルの断片は音楽家バルシャイの姿を見事に捉えた映像だと感じ入って観た。

結局のところ、一人で蒐集し得る情報には限りがある。インターネットでの僅かな情報発信を契機に、多くの同好の士と交流できることは、望外の喜び。皆様、今後ともよろしくお願い申し上げます。
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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