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『未完成 大作曲家たちの「謎」を読み解く』(角川SSC新書, 2013)

シューベルト、ブルックナー、マーラー、ショスタコーヴィチ、プッチーニ、モーツァルトの有名な未完成作品を題材に、それぞれの成立や初演等にまつわる「謎」に迫ろうという内容。帯には「芸術作品における完成とはなにか?」「音楽史ミステリ」とあるが、著者の書き振りはむしろ淡々としており、煽り文句から想像されるトンデモな自説の開陳の類とは無縁である。

取り上げられた6曲は、ショスタコーヴィチの「オランゴ」を除き、敢えて言えば何のひねりもない王道の未完成作品である。それらにまつわる「伝説」を整理した上で、それを単純に否定するのではなく、事実を丹念に積み重ねることで未完成となったことの必然性が明らかにされている。作曲家の死が未完の大きな原因であることは当然だが、本書では若きショスタコーヴィチの(最近発見された)作品が収録されていることで、死と未完成とを無批判に結びつけるようなセンチメンタリズムが巧妙に排され、未完成の類型に多様さがもたらされているのも興味深い。

音盤の解説程度の知識しかない「初心者」にとっては、必ずしも劇的とは言えない事実の数々が目から鱗だろう。一方、相当量の薀蓄を持つ「マニア」にしてみれば、書いてある事実の一つ一つはさして目新しいものではないかもしれない。しかし、その積み重ねが呈する作品あるいは作曲家の姿は、読者に新鮮な印象を与えるに違いない。

なお「オランゴ」については、日本語で読めるほぼ唯一のまとまった文章である(他には、国内盤CDの解説くらい)。そもそもの情報源が限られているので、現時点で明らかになっていることは、ほとんど本書で網羅されている。ショスタコーヴィチ・ファンにとっては、この点だけでも一読の価値があるだろう(著者の本意ではないかもしれないが)。

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theme : クラシック
genre : 音楽

comment

Secre

No title

中川右介氏の本出るたびに読んでいます。私も数年前の「レコード芸術」の投稿欄にマーラー10番完成版のことを書いたことがあり興味深く読みました。大半は既視感のあるものでしたが「オランゴ」が新発見ですね。
彼の本では「歌舞伎」のことを書いたものが読みがいのあるもので特に記憶に残っている。
ご存知かもしれませんが「20世紀の10大ピアニスト」のなかにショスタコーヴィチを入れているのがユニークでした。
プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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