NHK交響楽団第1768回定期公演

  • リャードフ:魔法にかけられた湖、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第2番、チャイコーフスキイ:交響曲第5番 諏訪内晶子 (Vn) ソヒエフ(指揮) (2013.11.20 録画 [NHK ETV(2014.2.2)])
  • モーツァルト:レクイエム(バイヤー版&レヴィン版)より「アニュス・デイ」「ルックス・エテルナ」 アバド/ルツェルン音楽祭管弦楽団 バイエルン放送合唱団 スウェーデン放送合唱団 (2012.8.10 録画 [NHK ETV(2014.2.2)])
NHK Eテレの「クラシック音楽館」で2月頭に放送されたN響定期公演を、ようやく視聴した。録画したことで満足してそのまま放置してしまうのは、悪い癖だ。保存するにしても、できるだけリアルタイムで視聴するようにしないといけない。放送後、このブログへのアクセスが若干増えていたようだが、せっかく気にしていただいた方には大変申し訳なく思っております。

さて、若手の注目株の一人、ソヒエフの演奏を聴くのは、これが初めて。ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第2番の映像が地上波で流れるというだけの理由で観てみたので、演奏はおろか、実はソヒエフという名前を聞いたのも初めて。

冒頭のリャードフから、透明感のある静かな響きに耳を奪われる。ただ単に弱音に耽溺しているだけではなく、低弦の動きには生々しい情感が感じられ、静謐な音楽ながらもロシア音楽らしい濃口の抒情にも不足しない。味わいのある複雑な表情が、全体としては端正な佇まいの中に収められており、とても立派で素晴らしい演奏であった。

ショスタコーヴィチも、同様の印象。ただし、こちらは少々、安全運転だったのが惜しいところ。諏訪内も楽譜を見ながらの演奏だったが、確かにアンサンブルに罠の多い曲なのでソロもオケも心のどこかに不安を抱きながらの演奏だったのかもしれない。とはいえ、諏訪内の鋭さを伴った澄んだ響きはソヒエフが引き出すオーケストラの響きとよく合っており、自然な一体感のある聴き応え十分な出来であった。ただ、特に第2楽章で内的な燃焼度に欠けるように感じられたのは残念。表面的にクールであることは悪くないが、張り詰めたテンションの高さが最晩年のショスタコーヴィチ作品には必要であるだけに、いささかの不満は残った。もちろん、実演で音楽的にも技術的にもこの水準に達した演奏というのは、そうめったに接することはできないだろうが。

チャイコーフスキイの第5番は、指揮者もオーケストラも自家薬篭中のレパートリーと言ってよいのだろう。テンポはより自在に伸縮しつつも、全曲を通して一本筋の通った緊張感は見事。知情意のバランスが優れているのだろう。スマートな全体像はいかにも現代的だが、コントロールされつつも柄の大きな情感も十分で、節度を保った音楽作りにもかかわらず、非常な熱気に溢れた音楽に仕上がっていたのが面白い。

演奏会全体を通して、惰性で流すことの少なくないN響の隅々までが、明確な意思を持って演奏に参加していたように見え、最近聴いた中では断トツで綺麗な音を出していたことは、特筆に値するだろう。ソヒエフという指揮者の統率能力の高さが存分に示されていたことに感心した。今後の活躍にも注目していきたい。

放送時間の残りは、本年1月20日に逝去されたアバドの追悼映像。私が音楽を熱心に聴き始めた頃はいつまでも若手の雰囲気を持つ才能のある中堅といった感じだったアバドが、紛れもない巨匠として天寿を全うされたことに、時の流れの速さを痛感する。痛々しいほどに老いたアバドの指揮姿は、しかし不思議と往年の若々しさを感じさせ、その音楽は老成という形容は相応しくない溌剌とした生命力に満ちている。合掌。
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genre : 音楽

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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