【楽曲解説】スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」
Bedřich Smetana
ベドルジハ・スメタナ(1824~1884)
ベドルジハ・スメタナ(1824~1884)
Smyčcový kvartet č. 1 e-moll „Z mého života“
弦楽四重奏曲第1番 ホ短調「わが生涯より」
弦楽四重奏曲第1番 ホ短調「わが生涯より」

チェコ音楽の祖とされるスメタナが連作交響詩「わが祖国」と共にこの弦楽四重奏曲を作曲した1876年、彼の創作活動は頂点を迎えました。心身の健康を著しく害して(病名には諸説ある)8年後に亡くなるスメタナにとっては、既に晩年でした。「わが生涯より」という作曲家自身がつけた副題からも明らかなように、自叙伝的な内容を持った標題音楽である本作は、絶対音楽の聖域ともいうべき弦楽四重奏曲の分野では異色の作品です。楽譜に記されているわけではありませんが、初演後に友人や出版社に宛てた手紙の中で、スメタナ自身が各楽章の内容について言及しています。ちなみに、内輪の試演時のヴィオラ奏者はドヴォルザークでした。
第1楽章:「運命の呼びかけ(主要動機)、若き日の芸術への愛、あり余るほどのロマンティックな感情、漠然とした憧憬、やがて来る不幸の予兆(冒頭およびコーダのチェロのE音)」、第2楽章:「若い頃の楽しい生活の思い出、舞曲(ポルカ)の作曲家としての名声、長い年月を過ごした貴族社会の思い出(中間部)」、第3楽章:「のちに妻となったある少女(カテジナ・コラージョヴァー)への初恋の幸福」、第4楽章:「体得した民族音楽の特徴、成功の喜び、不吉な破局による中断、失聴の始まり(コーダの第1ヴァイオリンのE音)、暗い未来への不安、わずかな回復の希望も消え、最初の時代を思い起こしても苦悩しか残らない」。
シュペーテ弦楽四重奏団 第5回公演(2015年4月18, 25日)
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