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ミャスコーフスキイの交響曲全集

  • ミャスコーフスキイ:交響曲・管弦楽曲全集 スヴェトラーノフ/ロシア国立SO (Warner Music France 2564 69689-8)
7月4日のエントリーで言及した“大物”が、このミャスコーフスキイの全集。HMV ONLINEの在庫セールで、16枚組がなんと3,690円(税込)。これ以上値切るのは、作曲家にも演奏家にも失礼だろうということで、即買い。ソ連音楽に関心を寄せながらも今まで架蔵していなかった後ろめたさを、これでようやく払拭することができた。

この全集が登場した当初の衝撃や興奮については、有名なエフゲニー・スヴェトラーノフのページHMV ONLINEの商品紹介ページのレビューなどに残っている、今なお色褪せぬ熱い想いのこもったコメントの数々を見ていただければ十分だろう。本全集にかけたスヴェトラーノフの想いについてはもちろんのこと、本全集の持つ意義についても、いまさらここで屋上屋を架すつもりはない。

以下、全集を通して聴いてみて感じたことなどを、自分自身の頭の整理のために、少しだけ記しておくことにする。

まずはミャスコーフスキイの管弦楽曲について。本全集には、作品番号のついている交響曲および管弦楽曲の全てが収録されている。それらを、簡単に表にまとめてみた:

作品番号作品名作曲年備考
3交響曲第1番 c-moll1908※スクリャービン:交響曲第4番「法悦の詩」
9交響詩「沈黙」1909~10※ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
10シンフォニエッタ A-dur1910~1※グラズノーフ:ピアノ協奏曲第1番
11交響曲第2番 cis-moll1910~1
14交響詩「アラストル」1912※プロコーフィエフ:ピアノ協奏曲第1番初演
15交響曲第3番 a-moll1913~4※スクリャービン:ピアノ・ソナタ第10番
17交響曲第4番 e-moll1917~8
18交響曲第5番 D-dur1918※プロコーフィエフ:交響曲第1番「古典」初演
23交響曲第6番 es-moll「革命」1921~3
24交響曲第7番 h-moll1922
26交響曲第8番 A-dur1923~5※ショスタコーヴィチ:交響曲第1番
28交響曲第9番 e-moll1926~7
30交響曲第10番 f-moll1926~7
32-1セレナード1928~9
32-2シンフォニエッタ h-moll1928~9
32-3抒情小協奏曲1929
34交響曲第11番 b-moll1931~2※グラズノーフ:サクソフォーン協奏曲・サクソフォーン四重奏曲
35交響曲第12番 g-moll「十月」1931~2
36交響曲第13番 b-moll1933
37交響曲第14番 C-dur1933
38交響曲第15番 d-moll1933~4
39交響曲第16番 F-dur1935~6※ショスタコーヴィチ:交響曲第4番/プロコーフィエフ:バレエ「ロミオとジュリエット」/ラフマニノフ:交響曲第3番
41交響曲第17番 gis-moll1936~7※1936年1月28日、「音楽の代わりに荒唐無稽」(プラウダ批判)
42交響曲第18番 C-dur1937※ショスタコーヴィチ交響曲第5番
46交響曲第19番 Es-dur1939
48祝典序曲1939
50交響曲第20番 E-dur1940※ラフマニノフ:交響的舞曲
51交響曲第21番 fis-moll「交響的幻想」1940
54交響曲第22番 h-moll「交響的バラード」1941※1941年6月22日、大祖国戦争開始
56交響曲第23番 a-moll1941
63交響曲第24番 f-moll1943
65鎖の環1944
68シンフォニエッタ a-moll1945~6※1945年5月9日、大祖国戦争終結
69交響曲第25番 Des-dur1945~6
71スラヴ狂詩曲1946
76悲愴序曲(赤軍設立30周年記念)1947※プロコーフィエフ:交響曲第6番初演
79交響曲第26番 C-dur「ロシアの主題による」1948※1948年2月、ジダーノフ批判
80ディヴェルティメント1948※ショスタコーヴィチ:「森の歌」(1949)
85交響曲第27番 c-moll1949~50※1950年8月8日没

交響曲がミャスコーフスキイの創作人生の初めから終わりまでをほぼ空白なく網羅していることを、この表からも見て取ることができる。また、グラズノーフやラフマニノフ、スクリャービンのように、いわば“前の時代”の作曲家と、ショスタコーヴィチのように“次の時代”の作曲家との過渡期を生きながらも、実は“次の時代”の嚆矢であったプロコーフィエフとは“同時代”人であったという、なんともその立ち位置を評価しづらい作曲家であることもわかる。その晦渋な作風とロシア音楽史における立ち位置は、ドイツ後期ロマン派におけるレーガー辺りに相当するような気がする。

交響曲を番号順に聴いていくと、「初期-中期-後期」のように明確に区分できるわけではないが、その作風が漸次変化していることを感じることができる。大祖国戦争が始まって以降は創作のスピードが落ちているが、戦時中の作品が少なくともあからさまな国威発揚的な雰囲気を持っているとは言い難いことから、それは当局からの要請云々というよりも、純粋に年齢的な事情などによるのではないかと思える。ショスタコーヴィチのように目立った立場には生涯を通していなかったためか、創作に対して外的な影響があったようには思われず、体制迎合でもなければ反体制というわけでもなく、ただひたすら自身の音楽的な思考を交響曲という形で表現し続けた作曲家という印象である。ジダーノフ批判ではミャスコーフスキイも槍玉にあげられたが、その死の2年前のことであった彼にとっては、精神的にはともかく、実際的な痛手はあまり受けなかったのではないかと推察する。批判後に最後の交響曲と弦楽四重奏曲を書いているが、どちらもそれまでのミャスコーフスキイ作品の路線からそう大きく逸脱したものではない。

むしろピアノ・ソナタである方が相応しいと感じられる箇所もある初期作品と、熟練した管弦楽法で深く豊かに歌い上げる後期作品との間に、作曲技術面での大きな進展があることは当然だが、内なる情念のうねりが、番号を重ねると共に試行錯誤を繰り返しながら人生肯定的な抒情へと収斂していく様は、創作人生をかけた社会主義リアリズムの体現であるようにも感じられる。もっとも、聴き手にアピールするような歌謡性や絢爛豪華な響きなどとは終始無縁な作風に対して、社会主義リアリズムの語を当てるのは的外れなのだろうが。

スヴェトラーノフ/ロシア国立響の演奏については、短期間にこれだけ膨大な量の録音(しかも、オーケストラにとってはどの曲も初見に近かっただろうと思われる)をこなしていることもあって、このコンビの他の録音と比べると練り上げに不足を感じる曲や瞬間が少なくないのは事実。各曲を単独で評価するならば、他により優れた演奏もあるが、それらのほとんどがソ連時代の古い録音であることを考えると、高い水準で整った演奏をクリアな音質で聴くことができるというだけでも、この全集を空前絶後と形容するに十分だろう。

収録曲の中でとりわけ素晴らしいのは、第22番。最初の一音から、溢れ出るエネルギーと柄の大きな歌心に間然とすることがない。この曲だけは1970年の古い録音(しかもライヴ)をそのまま収録していることからも、スヴェトラーノフ自身がこの演奏の出来に満足していたのであろう。次いで、スヴェトラーノフが晩年にその第2楽章だけを再録音している第27番も挙げておきたい。ミャスコーフスキイの最高傑作の真価を知るに十分な、隙のない名演である。

HMVジャパン
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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Myaskovsky,N.Y.

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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