シュヴェツィンゲン音楽祭の弦楽四重奏シリーズとボレイコのショスタコーヴィチ(hänssler)

  • ブリテン:弦楽四重奏曲第3番、シューベルト:弦楽四重奏曲第14番 アマデウスQ (hänssler CD 93.706)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲第79番 Op.76-5「ラルゴ」、フォルトナー:弦楽四重奏曲第4番、ラヴェル:弦楽四重奏曲 メロスQ (hänssler CD 93.716)
  • ベルク:弦楽四重奏曲、ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第10番、バルトーク:弦楽四重奏曲第1番 東京Q (hänssler CD 93.723)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲第70番 Op.71-2、ブラームス:弦楽四重奏曲第3番、ツェムリンスキー:弦楽四重奏曲第3番 ラサールQ (hänssler CD 94.228)
  • ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第2番 Op.9-1、モーツァルト:二重奏曲第1番、弦楽三重奏のためのディヴェルティメント グリュミオー・トリオ (hänssler CD 93.727)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第9&15番 ボレイコ/シュトゥットガルト放送O (hänssler CD 93.284)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第1&6番 ボレイコ/シュトゥットガルト放送O (hänssler CD 93.303)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ボレイコ/シュトゥットガルト放送O (hänssler CD 93.326)
HMV ONLINEから、hänsslerレーベルのセールの案内が届いた。このレーベルには気になっていたシリーズがあったので、この機会にまとめ買い。

まずは、往年の名四重奏団のライヴを。ドイツのシュヴェツィンゲン城で行わる音楽祭のライヴ盤はアルバン・ベルクQの一枚のみ架蔵しているが(2016年6月16日のエントリー)、他にも何れ劣らぬラインナップが目白押し。迷うことなく一気にオーダーしてしまった。

まずはアマデウスQ。先に紹介したケルン・ライヴ(2月24日のエントリー)と「死と乙女」は被っているが、こちらは1970年代後半、彼らの円熟期の演奏だけに、より一層アクの強い個性的な音楽を存分に楽しむことができる。こういう華のある演奏スタイルは、たまらなく懐かしい。

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メロスQのライヴは少し珍しいプログラムではあるものの、若き日の彼らの魅力が発揮された聴き応えのある一枚。演奏スタイルに合致しているのはフォルトナーだが、聴き物は何と言ってもハイドン。こんなにロマンティックなハイドンは、今となってはもう聴くことはできないだろう。ピリオド派にはウケが悪いだろうが、生理的なレベルで魂を揺さぶられる素晴らしい「ラルゴ」だ。覇気に満ちた終楽章も秀逸。

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東京Qのアルバムは、この団体の初代メンバーによる、いかにも彼ららしい極めて魅力的なプログラム。隅々までただの一音も蔑ろにすることのない、完璧に練り上げられたアンサンブルは、現在に至る弦楽四重奏演奏の新時代を切り拓いた彼らの歴史的な存在意義を再確認させてくれる。どの曲も有無を言わさず素晴らしいのだが、バルトークの熱気は、とりわけ尋常ではない。

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ラサールQのアルバムは、シュヴェツィンゲン音楽祭のライヴ録音ではなく、南西ドイツ放送(SWR)の放送録音。これもまた収録曲が秀逸。何といっても、ツェムリンスキーの3番が凄い。この曲を、これだけ熱気溢れる集中力で一気呵成に聴かせるのは、彼らをおいて他にないと思わせるに足る突き抜けた説得力を持った演奏である。ハイドンの作品71-2やブラームスの3番も、ロマンティックでありながらもどこか乾いた武骨さを感じさせる彼らのアンサンブルの妙を堪能できる秀演。

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グリュミオー・トリオのライヴ盤は、再びシュヴェツィンゲン音楽祭での録音。今回の買い物の中で最も音楽的な感興に満ちた一枚であった。音そのものだけでなく、奏でられる音楽の流れ、リズム、内容の全てにおいて瑞々しく気品のある美しさが漲っている。三重奏あるいは二重奏のソリスティックな華やかさを、最上の形で味わうことができる。

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まるでベートーヴェンやブラームスのように当たり前にショスタコーヴィチの交響曲の新譜がリリースされる近年では、さすがにその全ての録音を当たるのは骨が折れるし、歳のせいかその気力もなくなってきた。ただ、新譜の動向くらいはできるだけチェックするようにしているので、ボレイコの交響曲シリーズも気にはなっていた。このシリーズ第1弾の第4番&「ムツェンスク郡のマクベス夫人」組曲(2008年3月4日のエントリー)に加えて、ドイツ学生連盟オーケストラを振った第1番(2004年11月9日のエントリー)を架蔵しており、そのどちらにも好印象を持っていたこともあったので、現時点でリリースされている(第4番以外の)3枚をまとめてオーダー。以下、リリース順に。

シリーズ第2弾の第9&15番は、ことさらに曲の成立背景などを解釈に反映させるのではなく、両者共に同じスタンスで臨み、そして成功した好演と言える。まず、リズムの処理が模範的で、音楽の流れに淀みが一切ない。その上で、思いっきり盛り上げてクライマックスを作るので、スマートな聴きやすさと生理的な興奮とが極めてバランスよく両立している。しかも、個々の楽想の描き分けも自然かつ適切であり、まさに現代のスタンダードと言ってよい出来である。あえて言えば、第15番の響きが健康的に過ぎるようにも思えるが、これはオーケストラの特質も多分に影響しているのであろう。

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シリーズ第3弾の第1&6番も、同様に優れた演奏。明晰かつ流麗な音楽が心地よい。リズムの面白さ、旋律の美しさが手堅くも自然に表出されている。第1番は、最後の最後で少しコントロールが利かなくなっているのが惜しいが、ライヴ録音としては許容範囲内。第6番は思いの外、疾走感がなく落ち着いた演奏だが、この辺りがボレイコの個性なのかもしれない。

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現時点での最新盤(と言っても、既に2年以上前のリリースだが)である第5番は、こうしたボレイコのスタイルが最良の形で結実した素晴らしい演奏である。冷静な組み立てと内なる燃焼度の高さが、端正な響きと過不足のない熱狂を風格をもって生み出している。テンポは比較的遅めではあるが、終始弛緩することがない。終楽章のコーダなどは、音楽的にも技術的にも理想的な仕上がりである。

シュトゥットガルト放送交響楽団は昨年、バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団と統合して南西ドイツ放送交響楽団となり、運営体制上の問題を抱えているのかもしれないが、できればこのシリーズ、せめて声楽抜きの器楽交響曲の全てが揃うまでは継続してもらいたいところである。

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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