往年の名指揮者達によるショスタコーヴィチの交響曲

  • ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ムラヴィーンスキイ/レニングラードPO (Altus ALT315/6)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5、9番 チェリビダッケ/スウェーデン放送SO (Weitblick SSS0175-2)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 コンドラーシン/フランス国立放送O (Altus ALT309)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第8番 ゲールギエフ/マリイーンスキイO (Mariinsky MAR0525 [SACD])
HMV ONLINEからのセール案内メールに釣られて、往年の名指揮者達によるショスタコーヴィチの交響曲を徒然なるままにオーダー。

まずは、ノルウェーのベルゲンで行われた音楽祭におけるムラヴィーンスキイのライヴ録音。1961年6月2日の演奏会の全てが収録されている。「英雄」の方はArkadia盤(CDGI 714.2)で架蔵済みだが、同盤に収録されていたショスタコーヴィチは1967年5月26日のライヴ録音であり、本盤の初出音源とは異なる。両曲ともにモノラルなのは残念だが、全体に聴きやすい音質で、「英雄」はArkadia盤よりはるかに明瞭なのが嬉しい。

いかにもムラヴィーンスキイらしく鋭利で一切の弛みがない、それでいて濃密なロマンを湛えた「英雄」が、異端の演奏には違いないのだが、それでもなお素晴らしい。耳をつんざくような金管楽器やティンパニの音は、ピリオド楽器に馴染んだ現代のリスナーの耳にとってはむしろ違和感なく受け入れられるだろう。一方のショスタコーヴィチは、安定の名演。一気呵成に全曲を駆け抜けるような演奏で、後年の枯淡の味わいとは異なり、壮年期の充実した覇気に圧倒される。


チェリビダッケのショスタコーヴィチ演奏は第9番、次いで第5番に集中しているが、いずれも彼の音楽的個性が強く反映した演奏である。1960年代半ばの演奏を集めた本盤でも、壮年期ながらも晩年に通じるチェリビダッケの確立した作品解釈を味わうことができる。第9番は、微視的な仕掛けの細やかさにチェリビダッケのこだわりを感じるものの、作品の本質的なスピード感が決定的に損なわれているので、あくまでもチェリビダッケを聴くべき録音である。一方の第5番は、遅めではあるものの標準的な範疇のテンポ設定であり、スケールの大きな起伏を持つ聴き応えのある仕上がりとなっている。こうなるとオーケストラの威力に若干の物足りなさも感じるが、技術面ではそれほどの不満はない。


コンドラーシン4種類目の第8番は、フランス国立放送管を振ったシャンゼリゼ劇場でのライヴ録音。芝居っ気たっぷりの大柄な音楽、そして全曲を貫く暴力的な集中力は、コンドラーシンの芸術の粋と言っても過言ではないほどの見事さ。終始鳴り響く「ショスタコーヴィチの音」は、これがフランスのオーケストラということを忘れさせる。1960年代後半の放送録音ではあるが、他の3種の音源に比べて音質はかなりまし。コンドラーシンの第8番を聴くならば、本盤がファースト・チョイスとなるだろう。


最後に同じく第8番を、アリアCDのバーゲン・セールで購入したゲールギエフの新盤で。

ゲールギエフの同曲には、手兵マリイーンスキイ管と1994年に録音した旧盤(Philips)と、ベルリンPOとの1995年ライヴ(CD-R)とがあるが、どちらもゲールギエフらしいしなやかさが光る演奏ではあるものの、いかにも外面的な美観に終始した、あまり手応えのない仕上がりであった。それから20年近くを経た新盤は、とりわけ第1楽章の遅さが際立つ、それでいて表現意欲の密度が高い、充実した秀演となっている。ダイナミックレンジは非常に広いが、そこには常に余裕があり、決して力任せに濁ったり弱々しく響きが死ぬこともなく、最良の意味での流麗さが保たれている。それゆえに野性的な慟哭よりも、幻想的な響きの移ろいに耳を奪われる。この作品を知らない聴き手にとっては聴取の焦点を絞りづらい解釈かもしれないが、まさにそのことこそが、この作品に内在する複雑な諸相を描出している証左であり、ゲールギエフの進境を示すものであろう。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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