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ショスタコーヴィチ4題

  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番、ショスタコーヴィチ(アウエルバッハ編):ツヴェターエヴァの詩による6つの歌曲、アウエルバッハ:弦楽四重奏のためのソネット(弦楽四重奏曲第3番) ペーターゼンQ クシュプラー (MS) (Capriccio 71 104 [SACD])
  • ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガより第3、6、7、2、18、4番、ショパン:練習曲より第1、2、3、4、10、11、12、17、18、19、20、23、24番、ポロネーズ第7番「幻想」 リヒテル (Pf) (Supraphon SU 3796-2)
  • ムーソルグスキイ:展覧会の絵(ラヴェル編)、歌劇「ホヴァーンシチナ」より「モスクワ河の夜明け」(ショスタコーヴィチ編)、交響詩「禿山の一夜」(リームスキイ=コールサコフ編)、歌劇「ソローチンツィの定期市」より「ゴパーク」(リャードフ編) ゲールギエフ/ウィーンPO (Decca 468 526-2)
  • ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番、ブリテン:シンフォニエッタ、ショスタコーヴィチ:交響曲第1番 イッサーリス (Vc) クルレンツィス/マーラーCO (EuroArts 2059814 [Blu-ray])
HMV ONLINEから、入荷遅れの商品を含む音盤が届いた。

ペーターゼンQのアルバムは、何と言ってもツヴェターエヴァの歌曲の弦楽四重奏編曲が注目に値する。ショスタコーヴィチ自身の管弦楽版に比べるとさすがに色彩感には劣るが、ピアノ伴奏を基準に考えるならば原曲の雰囲気を一層豊かに広げるような、見事な編曲である。問題は演奏で、弦楽四重奏のみならず歌手までもが一本調子なために、作品が湛える不健康な艶かしさが全く表現されていない。こういう曲こそ現代的な四重奏の演奏様式が相応しいと思えるだけに、是非とも他の団体による演奏を期待したいところ。第8番も同様の印象だが、スケール感のある迫力が漲った剛毅に突き進む音楽は、同じ一本調子でもそれなりに聴かせる。アウエルバッハの作品は、もう少し静謐な美しさを味わいたいところではあるが、作品を知るという点において不足はない。


リヒテルのSupraphon録音のショスタコーヴィチは、未CD化だった第4番(dell'Arte盤)も含めて架蔵済みだったが、安価だったこともあって何となくオーダー。いずれも静謐な抒情が際立つ、「24の前奏曲とフーガ」の理想的な演奏である。技術的な完成度も極めて高い。

ただ、このアルバムの聴きどころは、プラハでのライヴ録音のショパンだろう。作品10-1の最初の一音から息つく暇もなく一気に聴かされてしまう。生命力に溢れ、感傷的ではないにもかかわらず聴き手に深い感傷を抱かせる濃口の音楽は、全盛期のリヒテルの魅力を余すところなく伝えている。Pragaレーベルで一部は既発とのことだが、収録曲の多さや音質の点からも、迷わずこのSupraphon盤を採るべきである。


ゲールギエフによるムーソルグスキイ作品のライヴ盤は、彼が楽壇を席捲していた当時の話題盤。ムーソルグスキイの2つの歌劇の編曲にまつわる事情をあまり勉強していないので(そもそもフルスコアを揃えてすらいない)、音盤に編曲者が明記されていなければ、ざっと聴くだけでは確信を持って判別できなかったこともあって、ショスタコーヴィチの編曲も(作品番号が振られているにもかかわらず)積極的に集めていなかった。このゲールギエフ盤に収録された「モスクワ河の夜明け」は「ショスタコーヴィチ編曲」と明記されていることもあってリリース時からチェックしていたものの、いまさらながらようやく入手した次第。

ゲールギエフの演奏は、技術的な水準の差こそあれ、あまりオーケストラを選ばないというか、オーケストラの個性以上にゲールギエフの個性を強く感じさせるという印象があるのだが、少なくともこの音盤においては、ウィーン・フィルの美質が見事に発揮されている。「モスクワ河の夜明け」のショスタコーヴィチ版はリームスキイ=コールサコフ版に比べると音色の扱いがより繊細だが、この編曲にはウィーン・フィルの美音が実に相応しいと思わせるに足る仕上がり。しかもほの暗く濃い抒情はロシア以外の何物でもなく、流麗ながらもアクの利いたゲールギエフらしい音楽となっている。

メインの「展覧会の絵」も表現の振幅が大きな、壮麗な演奏。さらに、「禿山の一夜」の豪快で尽きることのない勢いを感じさせる音楽のインパクトも凄まじい。



ショスタコーヴィチの交響曲第14番の名盤で一躍名を馳せたクルレンツィスのBDも入手。遅ればせながら、ようやく彼の指揮姿を見ることができた。ベルギーのクララ国際音楽祭における2013年のライヴ映像である。収録順が前後するが、指揮者無しで演奏されるブリテンで、マーラー・チェンバー・オーケストラの高い技術と音楽性に圧倒される。作品1にして既にブリテンの個性的な音色が確立されている「シンフォニエッタ」だが、この多彩な音楽を明晰に処理しつつ、生き生きとした魅力的な音楽を表出する高度なアンサンブルは素晴らしい。

このオーケストラの機能を存分に引き出すクルレンツィスの手腕が、驚異的である。ショスタコーヴィチの2曲では、共に全てのフレーズに細やかで多彩な表情が付けられている。棒を持たない指揮ではあるが、指揮そのものが他を圧する表現力を有している訳では必ずしもないにもかかわらず、これだけの豊かな表情を実現している背景に、どのようなリハーサルがあるのか、あるいは指揮の秘密があるのかは全くわからない。とにかく、これほどまでに隅々が生き生きと躍動するような音楽は、そうそう聴くことができない。しかも、マニエリスティックな細部の誇張に陥ることなく、大局的な形式感や勢いのある流れも見事に構築されている。

それに対して、チェロ協奏曲第1番におけるイッサーリスの独奏は、熱気に走り過ぎて単調なのが残念。ライヴで聴いていればその気迫に圧倒もされるのだろうが、映像で視聴すると、クルレンツィスの細やかな処理との乖離が気になってしまう。

とはいえ、指揮者とオーケストラの本領が存分に発揮された、傑出した映像である。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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