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音楽書2冊

  • バリリエ, É.・西久美子(訳):「亡命」の音楽文化誌, アルテスパブリッシング, 2018.
  • ハガロヴァ, D.・小川勝也(訳):ユーリー・テミルカーノフ モノローグ, アルファベータブックス, 2018.
『「亡命」の音楽文化誌』は、「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」をテーマとして行われた、ラ・フォル・ジュルネ音楽祭2018の日仏共通オフィシャルブック。「亡命」というキーワードで、これだけ広範な作曲家とその作品を網羅していることに、軽く圧倒される。もちろんショスタコーヴィチを取り上げた章(第10章)があったから手に取ったのだが、著者の言う「精神的亡命」の概念は、率直に言ってピンと来なかった。心身共にロシアの地を離れることができなかったというのがショスタコーヴィチの悲劇であると同時に、彼を彼たらしめているのだから、ショスタコーヴィチを「亡命者」として論じるのには違和感がある。また、「ブロークの詩による7つの歌曲」を特に取り上げているのも、ヴァーインベルグの話題へ繋ぐための牽強付会のような印象を拭うことができない。

ただ、全体として読み応えがあるのは確かで、いかにもフランスっぽい文体に抵抗がなければ、お薦め。



テミルカーノフは、その演奏のいくつか(とりわけ若い頃の爆演)は非常に印象的で素晴らしいものの、ムラヴィンスキー没後のレニングラード・フィルの常任指揮者就任前後の動きに良い印象がなかったため、あまり本人について興味はなかった。この自伝もどき(著者によるインタビュー+過去の発言の集成)は、テミルカーノフがどのような人物なのかを、幾分冗長ではあるものの、見事に描出している。言葉は悪いが、要するにクソ真面目なのだろう。野心的というよりは、自身に高い目標を設定し、それを予定通りに達成しては、また次の目標を……といった具合。徹底して自分の事しか考えていないのだが、結果として傑出した業績を残しているのだから、文句のつけようもなく、またその強靭な自制力には感服する。

ショスタコーヴィチについては第3部の中で項を立てて言及している他に、実質的に演奏禁止状態であった最中に交響曲第13番を演奏したエピソードが紹介されているが、とりたてて目新しい事実や見解はない。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

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Secre

テミルカーノフモノローグ

テミルカーノフモノローグ読みました。彼の指揮では最近大阪フェスで読響で久しぶりに聞いたのです。ムラヴィンスキー没後批判的な発言が気になりましたが(次期ポストの人物は前任者に批判的なのはよくあるケースです)。マゼールとか。

コーカサスの少数民族出身で父親はパルチザンの活動家として捕らえられ早く亡くなっています。苦学して現在の地位に上りつめた顛末が描かれている。彼の指揮ではロシアや大阪で数回聴きましたが曲目が大阪ではチャイコフスキー5番ら東京に比べて名曲路線で物足りないのが残念.。
今まで彼の人となりは私には謎でしたが今回の本でかなり分かりました。彼がロシア文学特にプーシキンに心酔していることやボルチモア響の客演を通じてかアメリカ文学にも造詣が深いことを知り彼の出自を含めてこのようなバックボーンが彼の音楽の支えになっていると思った次第です。

Re: テミルカーノフモノローグ

どすとさん、ありがとうございます。

とにかく勉強家で、プロフェッショナル、といった感じの人物ですね。その音楽に対する好き嫌いはあるにせよ、尊敬(というよりは畏敬?)すべき人物であることを描き出した興味深い文献ですね。こんなマニアックな素材を刊行してくれた訳者と出版社にも感謝したいところです。
プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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