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偽イヴァーノフのショスタコーヴィチ

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第7番 イヴァーノフ/ソヴィエト国立SO (alto ALC 1241)
  • オリエント急行‐ライト・クラシック名曲集 イアン・サザーランド・コンサート・オーケストラ (alto ALC 1250)
  • ハイドン:弦楽四重奏曲第69~74番 グリラーQ (Vanguard ATM-CD-1650)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12~16番、大フーガ イェールQ (Vanguard ATM-CD-1942)
  • ギヨーム・ルクー作品全集 (Ricercar RIC 351)
アリアCDから、数回分のオーダーがまとめて届いた。

イヴァーノフのショスタコーヴィチ、といえば、ジャケットのクレジットを鵜呑みにして騙された…というか、自分の耳の不確かさを露呈した苦い経験(2005年8月29日のエントリー)を思い出すが、これ見よがしに「西側初出」と書かれているこのalto盤を「いかにも怪しい」と感じる程度には私も経験を積んだ。結論から言えば、コンドラーシンの全集録音で間違いない。たとえば第3楽章冒頭の木管楽器のピッチなどで確認できるが、面白いのは、チャプター4の頭が第4楽章冒頭ではなく、第3楽章コーダのGP部分になっていること。これはVictor盤全集と同じミスで、おそらくLPの第4面の頭を第4楽章の冒頭と勘違いしたのだろうが、少なくとも近年のMelodiya盤(MEL CD 10 01065)では適正にチャプターが打たれていることから、このalto盤がリマスターと称しているのはVictor盤CDの音質改善?改変?なのかもしれない。

演奏は、さすがに現在の基準で言えば荒っぽさは否めないものの、コンドラーシンにしては芝居がかったところのないごく普通の解釈ながら、全曲を貫く熱量の異様な高さに圧倒される名演。わざわざこの盤で聴く必要はないが、間違って購入してしまっても、収録されている演奏そのものは損ではない。


altoレーベルのもう一枚は、ちょっと凝った選曲のイージーリスニング・アルバム。収録曲は、以下の通り:
ベネット:映画「オリエント急行殺人事件」より「ワルツ」
モリー・マローン
ユーマンス(ショスタコーヴィチ編):タヒチ・トロット
ワルトトイフェル:スケーターズ・ワルツ
アルヴェーン:スウェーデン狂詩曲
アルベニス:タンゴ
ファーノン:スター誕生
ヴィンター:「歌と踊りの組曲」より「ファド」
ディーリアス:歌劇「コアンガ」より「ラ・カリンダ」
サティ(ドビュッシー編):ジムノペディ第1番
イッポリートフ=イヴァーノフ:組曲「コーカサスの風景」から「酋長の行列」
シャミナード:6つの演奏会用練習曲より「秋」
ヤルネフェルト:前奏曲
アイアランド:聖なる御子
ゲーゼ:ジェラシー
ドヴォルザーク:ユモレスク
モンティ:チャールダーシュ
ホイベルガー:喜歌劇「オペラ舞踏会」より間奏曲
シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
ヴォルフ=フェラーリ:歌劇「スザンナの秘密」序曲
この種の演奏の常で、原曲が管弦楽のために書かれている作品でも、オーケストレイションには適宜変更が加えられているようだ。お目当ての「タヒチ・トロット」は、おそらくショスタコーヴィチの編曲そのままで演奏されていると思われる。遅めのテンポで、全体に締まりのなさが気になる。その他、いずれも楽曲を愉しむには十分な水準の演奏ではある。文字通りの「ライト・クラシック」をBGM的に楽しむべきアルバムだろう。


グリラーQのハイドンは、名盤としてよく知られたもの。録音のデッドさに抵抗がなければ、すぐそばで奏でられているような生々しい臨場感を楽しむことができる。6曲全てにおいて第1楽章は鈍重で冴えない印象を受けたが、第2楽章以降はいずれも鮮烈なリズムと覇気に魅せられる。とりわけ緩徐楽章の泥臭いロマンティシズムを濃厚に漂わせた音楽は、個性的であると同時にハイドンの本質に深く迫った見事な音楽である。カルテットとしては1st Vn主導の古いスタイルではあるものの、旋律を担う外声に全体が一体となって寄り添う様は、この団体のアンサンブル能力の傑出した高さを示している。


イェールQのベートーヴェン後期は、上述したグリラーQのハイドンと同時期の録音。こちらも1st Vnのアールが主導するスタイル。流麗で、室内楽の香り高いアールの歌いまわしが、とにかく魅力的である。一方でVaがトランプラーであったり、2nd Vnにアールの弟子でもあった安芸晶子を擁するなど、内声の響きが充実していることもあり、敢えて言うならばバリリQとブタペストQとの折衷型のような印象も受ける。カルテットとしては第14番の第6楽章、アールの個人技としては第13番の第5楽章中間部以降を、その至芸の一端として特記しておきたい。どちらも弦楽四重奏の、そしてベートーヴェンの素晴らしさを余すところなく伝える、比類ない名演である。


ルクーの“作品全集”は、目にする度に入手すべきかどうか迷っていた。値下げされているのを見て、思い切って購入してしまった次第。収録曲は、以下の通り:
【CD 1】
ヴァイオリン・ソナタ V.64
ピアノ四重奏曲 V.62
コラール V.44
アンダンティーノ・センプリーチェ V.93
「父の実家の窓」V.77
「ケシ」V.80
弦楽四重奏のための瞑想曲 V.48
【CD 2】
弦楽四重奏のためのメヌエット V.49
弦楽四重奏のためのモルト・アダージョ V.52
アダージョ・レリジョーゾ V.84
マズルカのテンポで V.106
レント・ドロローゾ V.100
アンダンテ V.88
アレグロ・マルカート V.85
子守歌とワルツ V.95
アンダンテ・マリンコニコ V.91
アンダンテ V.86
弦楽三重奏のための主題と変奏 V.66
アンダンテ V.87
【CD 3】
2台のヴァイオリンとピアノのためのアダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ V.33
弦楽四重奏曲 ト長調 V.60
2台のヴァイオリンのためのメヌエット V.50
【CD 4】
チェロ・ソナタ V.65
ヴァイオリンとピアノのためのアンダンテ・ピウ・トスト・アダージョ V.38
四手のためのアンダンテ・ソステヌート V.92
ヴィクトル・ユゴーの戯曲「城主」のための序曲 V.27
【CD 5】
ピアノのためのモデラート・クヮジ・ラルゴ V.103
交響的習作第1番「勝利せる解放の歌」V.18
「ほんのり古風な、テンポの遅い舞曲が」V.81
「より濃密な影」V.79
リエージュの伝統舞曲クラミニョンの調べによる対位法的幻想曲 V.23
交響的習作第2番「ハムレット」V.19/「オフィーリア」第1版 V.21/第2版 V.22
【CD 6】
ピアノ三重奏曲 V.70
ピアノ・ソナタ V.105
四重弦楽合奏のためのアダージョ V.13
【CD 7】
婚礼の歌 V.17
「五月の小唄」V.73
合唱と管弦楽のための叙情歌 V.7
カンタータ「アンドロメダ」V.3
【CD 8】
チェロと管弦楽のためのラルゲット V.28
チューバと吹奏楽のための序奏とアダージョ V.28
「アンドロメダの嘆き」V.6
ピアノのための3つの小品 V.107
フランス・アンジュー地方の2つの歌による幻想曲(管弦楽版 V.24/四手版 V.25)
管弦楽のための3つの詩曲 V.82
子守歌 V.94
ルクーについて詳しいwebサイトによると、ルクーには124曲の作品がある(未完成の断片も含む)ので、この8枚組は厳密な意味の“全集”ではない。ただ、ヴァイオリン・ソナタとピアノ四重奏曲以外の作品を知るという意味において、質量ともに不足は全くない。

ピアノ独奏であれ、管弦楽曲であれ、恥ずかしいまでに大袈裟で感傷的な楽想はルクーの個性として全ての作品に刻印されている。私はルクーの臆面のなさがたまらなく好きなので、編成や楽曲の規模を問わず8枚に含まれているほぼ全ての作品を愉しんだ。人によっては、お腹一杯……となるかもしれない。

演奏は総じて高水準であり、大半の曲においてはこの全集に収録された演奏で十分だろう。ただ、ピアノ入りの室内楽曲を担当しているドーマスという団体の演奏は、少し表現の勢いがきついように感じられる。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

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Secre

イヴァーノフのライブ

大阪が文化レベルが高かった時代、1964年の大阪国際フェスで彼らは来日して1週間続けて父のヤンソンスとともに演奏会をしたのだった。その時のライブを会社の寮のTVを占領してみました。
曲はチャイコフスキー5番、もじゃもじゃの髪の毛を揺らしながらの指揮。(新聞のインタビューでベートーベンのようなと記述されていた)。
当時この曲は新鮮だったこともあり感動していまだによく覚えている。ほかの曲ではショスタコーヴィチの11番が取り上げられすさまじい演奏だったにちがいない。まだこの演奏を聴いた人が多数おられるかと思われるので感想を聞きたく思う。
その後直ぐにスべトラーノフになり「春の祭典」を生で聴いたがイヴァーノフの消息は不明となった。TVアーカイブスでも残っていればいいのだが。
プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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