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【楽曲解説】ヴォルフ:イタリアのセレナーデ

Hugo Wolf
フーゴ・ヴォルフ(1860~1903)


Serenade
イタリアのセレナーデ



 ブラームスの弦楽六重奏曲第1番が初演された年に生まれたヴォルフは、ドイツリート史上で最大の作曲家として広く知られていますが、完成に至った作品は少ないながら器楽曲も手掛けています。弦楽四重奏のための作品はわずか3曲のみですが、その最後を飾るこの曲は、ヴォルフの全作品中で最も親しまれているものの一つです。セレナーデとは本来、夜会などの機会において夜に演奏される音楽のことでしたが、19世紀になると夜のイメージをもった楽曲にこの名が付けられることが多くなりました。しかし「Sehr lebhaft(とても元気よく)」と記されたこの楽曲には、そのような雰囲気は微塵もありません。
 この曲を作曲した当時(1887)、ヴォルフは後にアイヒェンドルフ歌曲集としてまとめられる歌曲群に集中的に取り組んでいました。おそらくはその過程で読んだと思われるヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ(1788~1857)の『Aus dem Leben eines Taugenichts』(『愉しき放浪児』として岩波文庫に邦訳あり)に着想を得て、この曲が作曲されました。1挺のヴァイオリンを片手に放浪の旅に出た“のらくろ者”の青年が、イタリアに向かう道中で美しい令嬢に恋をするが……といった物語ですが(軽いミステリー仕立てになっているので、ここではあらすじを記しません)、主人公のお気楽な放浪の情景を描いたのがこの作品です。つまり、「“イタリア”を目指して放浪する青年が、道中で“セレナーデ”を奏でる情景」というのが、「イタリアのセレナーデ」という表題の意味です。作曲時には単に「セレナーデ」と記されていましたが、初演後にヴォルフ自身が手紙の中で「イタリアのセレナーデ」と呼んで以来、これが曲名として広く使われることになりました。
 後に、この曲を第1楽章とした3楽章の作品にしようという試みがなされましたが、残念ながらスケッチ以上に発展することはありませんでした。弦楽合奏で演奏されることも多い作品ですが、ヴォルフ自身による小管弦楽のための編曲もあります(レーガーの編曲と言われることもありますが、レーガーはヴォルフの没後に総譜の校正をしただけです)。


シュペーテ弦楽四重奏団 第9回公演(2019年4月27, 29日)

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Wolf,H. 演奏活動_DasSpäteQuartett

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Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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