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懐かしのCM

  • 樋口康雄CM WORKS ON・アソシエイツ・イヤーズ (Solid CDSOL-1195)
  • 樋口康雄 オリエンテーション (Warner WPCL 12655)
  • ラフマニノフ:ピアノ三重奏曲第1番「悲しみの三重奏曲」、アレーンスキイ:ピアノ三重奏曲第1番、ショスタコーヴィチ:ピアノ三重奏曲第2番、ムーソルグスキイ(クライン編):涙 トリオ・シャハム・エレス・ウォルフィッシュ (Nimbus Alliance NI 5917)
  • ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集 ヴィハンQ (Nimbus Alliance NI 6100)
  • サラサーテ:カルメン幻想曲、ナイチンゲールの歌 Op.29、ハバネラ Op.26-2、サパテアード、さらば、わがモンタナ、ツィゴイネルワイゼン、スコットランドの歌、アンダルシアのロマンス、バスク奇想曲、「ミニョン」のガボット、序奏とタランテラ、ナヴァラ シャハム、アンソニー (Vn) 江口玲 (Pf) ポサダ/カスティーリャ・レオンSO (Canary Classics CC07)
1年ほど前、YouTubeで懐かしいCMを見つけた。サントリーのビール「モルツ」が発売されたのは1986年のことだったが、その翌87年に、アルバン・ベルクQが出演したCMである。

麦畑編庭園編
サントリー生ビールMALT'S CM(1987)

当時、私は高校2年生だったのだが、ちょうどLPとCDの移行期にあり、数枚のLPで強く関心を抱いていたアルバン・ベルクQのCDを集め始めていた時期だっただけに、麦畑の中でご機嫌な音楽を奏でている彼らの姿(当然ながら、彼らの“動く”演奏姿はまだ観たことがなかった)に釘付けになったことを覚えている。

映像のインパクトもさることながら、何と言っても彼らが弾いている音楽が私の心を強く捉えた。「サントリー・モルツのCMでアルバン・ベルク四重奏団が弾いている曲は何ですか?また、この演奏を収録したアルバムの発売予定はありますか?」という葉書を、東芝EMI宛に出したところ、「ガーシュウィンの『ス・ワンダフル』という曲です。残念ながら録音予定は一切ありません」という丁寧な返信が葉書で届いたのも良い思い出だ。

このCM、というより、「ス・ワンダフル」の弦楽四重奏用編曲の有無は、常に私の意識の一角を占めていて、ふとした拍子に何度も思い出す。つい先日、またその発作が起こり、せめて編曲者くらいは分からないものかと色々と検索などしていたら、Pianissimoというサイトに辿り着き、このCMで採用されている編曲が樋口康雄氏によるものだということが判明した。このサイトの情報は極めて膨大で、それがまた樋口氏の音楽活動の広範さを表してもいるのだが、せっかくなので、サイトで入門用として挙げられている音盤の内、2枚をAmazonで入手して聴いてみた。

まずは、1972~91年に制作された66作品を収録したCM作品集。もちろん、この期間の仕事の全てではなく、せいぜい4分の1程度である。時系列に配列されているので、サウンドに投影された時代の雰囲気を楽しむことができる。各曲のタイトル=CMの商品名を見ると、たぶん何度もテレビで観ていたに違いない物が少なからずあるのだが、曲を聴いただけで「あぁ、あれ!」となったものは一つもなかった。あのエリマキトカゲで爆発的に注目された三菱自動車ミラージュのCMでさえ、そう。「CM音楽は使い捨て」というのは、作曲家には大変失礼かつ不本意な言葉であろうが、確かにそういう側面があることは否定できない。ただ、こうして順番にまとめて聴くと、精々30秒程度の楽曲にも関わらず、どの曲にも育ちの良さを感じさせるような上品さと、思わず頬を緩めてしまうような愉快さが満ちており、もしかしたらそれが作曲家の個性なのかもしれない。


もう1枚は、クラシック作品集。5楽章から成る管弦楽曲と単一楽章のヴァイオリン協奏曲の2曲が収録されている。前者には「A Thousand Calabashes」、後者には「KOMA」という副題がついており、“瓢箪から駒”みたいな洒落が込められているようだ。ニューヨーク・フィルのメンバーによる室内アンサンブルによって演奏されており、私はヴァイオリン協奏曲の方に音楽的な興味を惹かれた。いわゆるクラシック畑で純粋培養された現代音楽とは一線を画していることもあり、近代フランス音楽の影響が強く感じられる、聴きやすくもイージーリスニングなどとは全く異なる気負いを感じさせる、ちょっと面白いアルバムである。この響きの背景にある作曲家の音楽的経験を、もう少し深く知りたいと思った。


続いて、アリアCDから届いた3枚を。今回もセール品を中心に目に付いた物をオーダーしただけなので、雑多なチョイスである。

ロシアのピアノ三重奏曲集は、チェロのウォルフィッシュだけはショスタコーヴィチの協奏曲などで聴いたことがあるものの、残る2人は初めて聴く演奏家。ヴァイオリンのシャハムは、有名なギル・シャハムとは別人である。丁々発止…というよりは、室内楽的なまとまりを優先したようなアンサンブルで、音楽的な主導権はピアノにあるように聴こえる。録音のせいか、再生機器のせいかはわからないが、低音の力強さや広がりに欠けるために、全体にこじんまりとした細身の印象に留まるのが残念。いずれの作品においても、技術的な精度は十分に高く、音楽解釈もごく模範的なもの。ムーソルグスキイのピアノ曲の編曲は、アンコール・ピースとして魅力的である。


ヴィハンQは、1985年結成のポスト・スメタナQのトップ・ランナーである。ずっと中堅団体だとばかり思い込んでいたが、いまや紛れもないベテラン。彼らが2000年代後半にライヴ収録したベートーヴェン全集から、後期のセットである。彼らの演奏は、明らかにスメタナQの後継である。身の詰まった手応えのある武骨な音色で、往年の様式を強く感じさせる歌を歌いあげる。現代の団体が工夫を重ねている細かなアーティキュレイションの類は、ほとんど前面に出て来ることはない。もちろん、技術的な水準は高いのだが、音楽自体は懐古趣味と言ってよいくらい。5月25日のエントリーで紹介したベルチャQの演奏などと比べると、神経質さが感じられない分、心穏やかに聴くことができる一方、やはり表現の陰影に欠けるのが物足りなく、全体を通して退屈する瞬間が少なくないのは残念である。

なお、第13番の終楽章は「大フーガ」が採用されているが、差し替え版の終楽章は本盤には収録されていない。


Canary Classicsは、2003年に設立されたギル・シャハムの自主制作レーベルである。本盤は、2008年のサラサーテ生誕100年を祝したライヴ録音(オーケストラ伴奏のトラック)を中心とした、サラサーテの作品ばかりを収録したアルバムである。どの作品にも色濃く刻印されている、いわゆる“スペイン情緒”と、華やかなヴァイオリンの超絶技巧を堪能できる内容となっているが、シャハムはもちろんのこと、彼の妻であるアデーレ・アンソニーも、非常に真面目で理知的な演奏を繰り広げているのが、いまひとつ物足りないところではある。こういう曲を聴くのなら、弾き手の“ドヤ顔”が見えないとつまらない。もちろん、ツィゴイネルワイゼンやカルメン幻想曲のような超有名曲だけでなく、聴く機会がそれほど多くない作品をこの水準の演奏で聴けることに何も不満はないのだが。ちなみに、オーケストラには山師的な胡散臭さがあって、文字通り血沸き肉躍るような興奮を煽られる。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 演奏家_AlbanBergQuartet

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プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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