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ルドルフ・バルシャイを讃えて

  • ツィンツァーゼ:チェロ協奏曲第2番(5つのエピソードによる)、ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第2番 ホルヌング (Vc) ポーガ/ベルリン・ドイツSO(myrios MYR023)
  • ショスタコーヴィチ:ロシアとキルギスの民謡による序曲、ドビュッシー:「海」管弦楽のための3つの交響的素描、ピアソラ:タンガーソ、バーバー:管弦楽のためのエッセイ第2番 レオン/ボフスラフ・マルティヌー PO(Centaur CRC2799)
  • ブリテン:ラクリメ-ダウランドの歌曲の投影、ロックバーク:ヴィオラ・ソナタ、ペルト:鏡の中の鏡、ショスタコーヴィチ:ヴィオラ・ソナタ ミンクラー (Va) ジョンソン (Pf)(Centaur CRC3049)
  • ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ ボンド (Pf)(Centaur CRC2896/2897)
  • ルドルフ・バルシャイ(1924-2010)を讃えて(ica ICAB5136)
アリアCDから、いつもより大きな箱が届いた。

珍しく新譜を一枚。ドイツの若手チェリスト、ホルヌングによる、1966年に作曲された2曲のチェロ協奏曲を収録したアルバムである。極めて高い精度のテクニックをもって隅々まで明晰に解釈された、いかにも現代的な精緻さを有した演奏と言えるだろう。ショスタコーヴィチの陰鬱でありながらも諧謔を感じさせる繰り言のような独特の雰囲気は、いささか平準化されてしまったようにも思えるが、より普遍的な聴きやすさという点では決して悪くはない。グルジアの作曲家ツィンツァーゼの協奏曲は、ショスタコーヴィチに比べるとはるかに生気の感じられる暗さであるが、こちらの方が、少なくとも現時点のホルヌングにはより合っているように思われる。


Centaurレーベルのセールから、ショスタコーヴィチ作品を収録した未架蔵の3枚をオーダー。

まずは、レオン/ボフスラフ・マルティヌー・フィルによる管弦楽集。このオーケストラを聴くのは初めて。本盤に関する限りは、技術的には中の上、といった感じだろうか。ドビュッシーとバーバーは、その音楽語法に馴染みがある故か、表現の振幅も大きく、聴き映えのする面白い演奏に仕上がっている。ショスタコーヴィチも馴染みという点では同じように思われるのだが、民謡主題の歌いまわしに加えて主部に入ってからのリズムのノリに不満が残る。さらにピアソラ作品ではタンゴ的要素が全く表出できておらず、ピアソラの愛好家には全く受け入れられないだろう。


ミンクラーというヴィオラ奏者の名は初めて知ったが、わりとオーソドックスな選曲の現代ヴィオラ曲集は、現在のヴィオラ界の技術水準の高さを象徴するような、充実の一枚。ヴァイオリンと同様の明晰な響きと、ヴィオラならではの深く暗い響きとがごく自然に両立している。どの曲も模範的な解釈だが、ピアノにややロマンティックな傾向がある。透明ながらも薄っすらと色付いた美しさは、ショスタコーヴィチでは好みが分かれるかもしれないが、ブリテンや、とりわけペルトでは堪らない。


ボンドというピアニストも初めて聴くが、“中庸”という言葉の最良の意味を体現したような音楽に、寛いだ心地好さを覚えた。取り立てて突き抜けた要素はない代わりに、全24曲を通して聴いても妙な疲労を感じることがない。この曲集が苦手な聴き手にはお薦め。


さて、今回の大きな箱の正体は、バルシャーイの没後5周年BOX(20枚組)であった。収録内容は、以下の通り:
【Disc1】
  1. シューマン:おとぎの絵本(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  2. プロコーフィエフ(バルシャーイ編):バレエ「ロメオとジュリエット」(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  3. フォーサイス:ケルトの歌(バルシャーイ (Va) ストゥチェフスキイ (Pf))
  4. ショパン(バルシャーイ編):練習曲第14番(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  5. グリーグ(バルシャーイ編):抒情小曲集第3集より「春に寄す」 (バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  6. ラヴェル(ボリソーフスキイ編):亡き王女のためのパヴァーヌ(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  7. ドビュッシー:フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ(コルニーフ (Fl) バルシャーイ (Va) エルデリ (Hp))
  8. ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
  9. ドビュッシー:「小組曲」より「小舟にて」(バルシャーイ (Va) シュライブマン (Pf))
【Disc2】
  1. J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番(バルシャーイ (Va))
  2. ヒンデミット:無伴奏ヴィオラのためのソナタ Op. 25-1 (バルシャーイ (Va))
  3. ヒンデミット:葬送音楽(バルシャーイ (Va) モスクワ室内O)
  4. カサドシュ(伝ヘンデル)(バルシャーイ編):ヴィオラ協奏曲(バルシャーイ (Va) モスクワ室内O)
【Disc3】
  1. ブーニン:ヴィオラ・ソナタ(バルシャーイ (Va) ニコラーエヴァ (Pf))
  2. クリュコフ:ヴィオラ・ソナタ(バルシャーイ (Va) ニコラーエヴァ (Pf))
  3. ゴルトシュタイン(伝ハンドキシン):ヴィオラ協奏曲(バルシャーイ (Va) モスクワ室内O)
  4. ブーニン:ヴィオラ協奏曲(バルシャーイ (Va) アノーソフ/ソヴィエト国立SO)
【Disc4】
  1. ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第1番(L. コーガン (Vn) バルシャーイ (Va) ロストロポーヴィチ (Vc))
  2. ベートーヴェン:弦楽三重奏曲第3番(L. コーガン (Vn) バルシャーイ (Va) ロストロポーヴィチ (Vc))
【Disc5】
  1. フォーレ:ピアノ四重奏曲第1番(ギレリス (Pf) L. コーガン (Vn) バルシャーイ (Va) ロストロポーヴィチ (Vc))
  2. ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲(ショスタコーヴィチ (Pf) モスクワ・フィルハーモニーQ)
【Disc6】
  1. ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1番(モスクワ・フィルハーモニーQ)
  2. ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第3番(チャイコーフスキイQ)
  3. ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第4番(チャイコーフスキイQ)
【Disc7】
  1. ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第7番(チャイコーフスキイQ)
  2. チャイコーフスキイ:弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」(L. コーガン、ギレリス (Vn)、バルシャーイ、タラルヤン (Va)、クヌシェヴィツキイ、ロストロポーヴィチ (Vc))
【Disc8】
  1. ボッケリーニ:交響曲 Es-dur, Op.35-2 (G.510)(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ヴィヴァルディ:ヴァイオリンとチェロのための協奏曲 B-dur, RV.547(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. ヴィヴァルディ:4つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 h-moll, Op.3-10 (RV.580)(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc9】
  1. アルビノーニ:弦楽オーケストラのための協奏曲 B-dur, Op.5-1(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. アルビノーニ:弦楽オーケストラのための協奏曲 D-dur, Op.5-3(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. タルティーニ:チェロ協奏曲 A-dur(ロストロポーヴィチ (Vc)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 g-moll, RV.319(L. コーガン (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  5. J. S. バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番(L. コーガン (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  6. J. S. バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲(L. コーガン、ギレリス (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc10】
  1. J. S. バッハ:ブランデンブルク協奏曲第4番(コルニーフ、ツァイデル (Fl)、D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. J. S. バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番(D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. J. S. バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番(D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. モーツァルト:交響曲第40番(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc11】
  1. モーツァルト:ディヴェルティメント KV136(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. モーツァルト:協奏交響曲(D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ (Va)、モスクワ室内O)
  3. モーツァルト:ロンド C-dur, KV201(D. オーイストラフ (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. モーツァルト:交響曲第29番(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc12】
  1. モーツァルト:交響曲第10番(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番(L. コーガン (Vn)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番(ギレリス (Pf)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. モーツァルト:ロンド D-dur, KV382(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc13】
  1. ハイドン:交響曲第49番「受難」(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ハイドン:ピアノ協奏曲第11番(ギレリス (Pf)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. ハイドン:交響曲第104番「ロンドン」(バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc14】
  1. シューベルト:交響曲第5番(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ショスタコーヴィチ:交響曲第14番(ドルハーノヴァ (S)、ネステレーンコ (B)、バルシャーイ/モスクワ室内O)
【Disc15】
  1. ロクシーン:交響曲第5番「シェイクスピアのソネット」(アレン (Br)、バルシャーイ/ボーンマスSO)
  2. ロクシーン:交響曲第4番「シンフォニア・ストレッタ」(バルシャーイ/ドイツ・ナショナル・ユースO)
  3. ロクシーン:ゲーテの「ファウスト」からの3つの情景(プロキーナ (S)、バルシャーイ/ユンゲ・ドイチェ・フィルハーモニー・アンサンブル・レゾナンス他)
【Disc16】
  1. マルチヌー:ディヴェルティメント(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. バルトーク:ディヴェルティメント(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. ストラヴィーンスキイ:弦楽のための協奏曲(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  4. ストラヴィーンスキイ:バレエ音楽「ミューズをつかさどるアポロ」(バルシャーイ/台北国立SO)
【Disc17】
  1. パーセル:弦楽のための2つのファンタジー(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ブリテン:シンプル・シンフォニー(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  3. ティペット:2重弦楽オーケストラのための協奏曲(バルシャーイ/バース祝祭室内O)
  4. ティペット:歌劇「真夏の結婚」より「典礼舞曲」(バルシャーイ/ボーンマスSO)
【Disc18】
  1. モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」(バルシャーイ/モスクワ室内O)
  2. ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」(バルシャーイ/東京都SO)
  3. マーラー:さすらう若者の歌(アレン (Br)、バルシャーイ/ケルンWDR SO)
【Disc19】
  1. マーラー(バルシャーイ補筆):交響曲第10番(バルシャーイ/東京都SO)
【Disc20:『マエストロ・バルシャイへの挨拶』】
  1. ボロディーン(バルシャーイ編):弦楽四重奏曲第2番(NSO弦楽アンサンブル)
  2. チャイコーフスキイ(バルシャーイ編):弦楽四重奏曲第1番(NSO弦楽アンサンブル)
  3. ショスタコーヴィチ(バルシャーイ編):弦楽四重奏曲第8番(NSO弦楽アンサンブル)

ヴィオラ奏者、弦楽四重奏をはじめとする室内楽奏者、モスクワ室内管の設立者、指揮者、編曲者……といった、音楽家バルシャーイの全貌を存分に味わうことのできるBOXである。全てCD初出音源とのことであるが、たとえばヴィヴァルディの「四季」がRevelation盤の演奏と同一か否かなどは精査していないため、この宣伝文句を鵜呑みにすることはできないが、既出音源あるいは架蔵済音源と重複があったとしても、これだけまとまった形で整理されているメリットは計り知れない。また、バルシャーイの遺族が制作に協力しているとはいえ、ライヴ録音を偽装したスタジオ録音が含まれている可能性も否定できず、ディスコグラフィを整備するのならばYedang盤などの既出音源とデータ照合をする必要があるだろう。

それにしても、膨大なレパートリーである。データは古いがバルシャーイのディスコグラフィとして公開されているリストを見ると、これでもその全てとは言い難いことに驚かされる。

ヴィオラ奏者としてのバルシャーイはボリソーフスキイに師事しているものの、その精確で洗練された響きは、ボリソーフスキイの孫弟子となるバシメートを彷彿とさせる現代的なものである。贅沢をいえば、D. オーイストラフ/モスクワPOと共演したベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」も聴きたかったところ。

室内楽奏者としては、何よりもギレリスやL. コーガン、ロストロポーヴィチなどの豪華共演陣に圧倒されるが、その存在感たるや、ヴィオラ奏者が目指すべき最高峰とでも言いたくなる。また、モスクワ・フィルハーモニーQ(後のボロディーンQ)やチャイコーフスキイQといった録音自体が稀少な弦楽四重奏団の若々しくも鮮やかな演奏も素晴らしい。

しかし、バルシャーイといえば何よりもまずモスクワ室内管である。本ブログでも何度も記してきたことだが、私のクラシック音楽の原体験は「世界大音楽全集」(河出書房新社)であった。とりわけ、ヴィヴァルディやバッハ、そしてモーツァルトの巻は、文字通り“擦り減るまで”聴いたため、私にとっては(良くも悪くも)デフォルトの演奏である。現代の耳で聴くと必ずしも技術的に完璧ではないのだが、それでいて怜悧な完璧さを体現したようなアンサンブルの凄味は今なお他の追随を許さない境地である。ただ、完璧=冷たい、というわけでは決してなく、バロック音楽にせよモーツァルトやハイドンにせよ、かなり濃厚なロマンを感じさせるところに時代も感じさせられる。モーツァルトの交響曲は音の強度と鋭さが卓越しているので、今となってはさすがにこれをデフォルトとは言い難いものの、ヴィヴァルディとバッハについては、やはり彼らの演奏が私の奥深い部分に刷り込まれているようだ。こうなると色々思い出してきて、子供の頃、特に好きだった「弦楽のための協奏曲 G-dur, RV.151『アラ・ルスティカ』」や「フルート、ヴァイオリンとチェンバロのための三重協奏曲 a-moll, BWV1044」も聴きたくなった。中古LPでも探してみようかな。

モスクワ室内管との録音について付言しておきたいのは、協奏曲の“伴奏”の素晴らしさである。いかにもお仕事的な緩さを感じさせる演奏が少なくなかった当時において、これだけ手抜きをせず緻密に仕上げられた伴奏は、異端とすら言えるだろう。

1977年に亡命した後の指揮者としての活動は、残念ながら音盤という形での記録には恵まれていないだけに、CD4枚分以上の量が収録されているこのBOXの存在はありがたい。身贔屓ではないが、東京都響とのドヴォルザークとマーラーは、普通に傑出した秀演である。バルシャーイ最晩年に良好な関係にあった台北国立響も、立派な水準の演奏を聴かせている。

Disc20は、編曲者としてのバルシャーイに焦点を当てたもので、有名弦楽四重奏曲の弦楽合奏用編曲を、NSO弦楽アンサンブル(NSO=National Symphony Orchestra=台北国立響)がバルシャーイを偲んで指揮者なしで演奏した際のライヴ録音である。演奏の精度は他の収録演奏に比して格段に落ちるのが、残念。

最後に、収録されているショスタコーヴィチ作品の演奏について、まとめて言及しておきたい。ショスタコーヴィチ本人と共演したピアノ五重奏曲は、もしかしたらVogue Archives Soviétiques 651023というCD(現物未確認;弦楽四重奏曲第8番とのカップリング)に収録されているものと同一かもしれないが、現時点では確認する術がない。録音状態は聴き辛くはないものの、音の細かいニュアンスまでは捉えきれておらず、歴史的録音と割り切っていてももどかしさは残る。ただ、演奏は極めて素晴らしい。ショスタコーヴィチの状態もよほど良かったのか、終始端正に整ったピアノであり、若きボロディーンQと抒情的で清らかな美しさが際立つ音楽を聴かせている。演奏のみを評価するのであれば、全録音中のベストに挙げてもよい。ピアノ五重奏曲と同日の録音である弦楽四重奏曲第1番は、ボロディーンQが得意としたレパートリーであるだけに、後年の録音と比較するとセールスポイントに欠ける。もちろん、技術的には十分に洗練されている上に、素直で伸びやかな音楽には清新な魅力があることは言うまでもない。交響曲第14番は、収録日からするにショスタコーヴィチ65歳の誕生日を記念する演奏会でのライヴ録音と思われる。初演時のライヴ録音やスタジオ録音に聴かれる鋭い緊張感の代わりに、どこか泰然とした風格を感じさせる音楽になっている点で、1975年の東京ライヴ(Tokyo FM TFMC-0038)により近い演奏である。これは、ドルハーノヴァの声質が甲高い鋭さではなく、暗く深いものであることも影響しているのかもしれない。ネステレーンコはいささか青臭い気取りを感じさせるものの、安定した立派な歌唱である。NSO弦楽アンサンブルによる室内交響曲は、技術面での粗さが気になる上に、音楽的な踏み込みも甘く、凡庸な演奏。

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theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. 演奏家_Barshai,R.B.

comment

Secre

No title

大昔、大阪労音の例会でバルシャイ/モスクワ室内管にてモーツアルト29番、バルトーク『ディベルティメント」を聞きましたが未だにあの演奏会忘れられないです。1970年リヒテルの希望でモーツアルト22番、27番をǸ響指揮したのを放送で聞いたがこれも日の目を見たいものだ。軋轢があったようですが。バルトークは25cmLpという珍しいサイズのもの時々聞いている。その後センチュリー響を指揮したリヒテルとのモーツアルトの初期のピアノ協奏曲、京響との「レニングラード」を生で聞いたのが最後でした。マーラーの10番の完成版の編曲やショスタコービチ交響曲全集も彼の大きな業績でした。地味ながら。
プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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