弦楽四重奏2題
- 『フィクション』 エベーヌQ ナタリー・デセイ、ステイシー・ケント、ファニー・アルダン、ルス・カサル (Vo)(Erato WPCS-13268)
- グノー:弦楽四重奏曲全集 カンビーニ=パリQ(Aparte AP177)
このアルバムは、エベーヌQの活動初期におけるエポックメイキングな成果である。演奏技術に加え、弦楽四重奏の可能性を汲み尽くすような編曲も、他の追随を許さぬ素晴らしさである。ヴィオラのヘルツォクが交代した現在ではもはやこの路線に回帰することはないだろうが、それ故に本盤の価値はこれからも色褪せることはないだろう。
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機を同じくして、アリアCDからグノーの弦楽四重奏曲全集も届いた。このような知られざる作品群の“全集”の誘惑には、滅法弱くて困ってしまう。
さて、本盤には5曲が収録されているが、正確にはグノーの全弦楽四重奏曲を網羅しているとは言えないようだ。とはいえ、現時点で演奏可能な状態で楽譜が残っている全てには違いない。楽曲の基本的な様式は5曲ともほぼ似たようなもので、ハイドンのような多彩な趣向やベートーヴェンのような生涯を俯瞰する変遷はなく、曲数こそはるかに及ばないがボッケリーニの作品群に通じる旋律美がいずれの作品においても際立っている。アリアーガの3曲には若干劣る気はするが、同程度には取り上げられてもよいとは思う。
ピリオド楽器の団体であるカンビーニ=パリQの演奏は、端正であると同時に表現意欲に満ちた多彩さが素晴らしく、楽曲の魅力が十分に表出された今後の規範となり得るものである。ただ、シューマン(1810年生)より年下でブラームス(1897年没)と同じ頃まで生きたグノー(1818~93)の音楽を、わざわざピリオド楽器で演奏する必要性は、私には感じられなかった。フランスとドイツとでは演奏様式の変遷に違いがあるのだろうし、そもそもモダン楽器の団体が興味を持つレパートリーではないのかもしれないが。
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