閉店間際に室内楽の棚だけチェック

  • ショスタコーヴィチ(バルシャイ編):室内交響曲、アイネ・クライネ・シンフォニー、弦楽のための交響曲 ロス/ドミートリィ・アンサンブル (harmonia mundi HMU 907634)
  • ヴォルフ:弦楽四重奏曲、イタリアン・セレナード、間奏曲 ヴィハンQ (ArcoDiva UP 0029-2 131)
  • ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1~3番 デ・サラム (Vc) (Disques Montaigne MO 782081)
仕事の帰り、ディスクユニオン 大阪クラシック館にふらっと寄り道。

バルシャイによるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲の編曲は、第8番の演奏および録音頻度が圧倒的に多く、次いで第10番がぼちぼち、残りは珍しい部類に入るだろうが、特に第1番はバルシャイ自身による2種の録音しかなく、ロス盤はこの曲を収録している点でコレクターの蒐集対象足り得る。第8番は手堅いアンサンブルで滑らかに奏でられるが、各フレーズの深い訴求力はなかなかのもので、水準の高い演奏である。大いに好感と期待をもって聴き進めたのだが、残念ながら第1番は技術的に苦しい箇所が少なくなく、楽しむことができなかった。第10番は少しマシだが、無難にまとまっている以上の印象はない。


ヴォルフの3つの弦楽四重奏曲を1枚に収録したアルバムは、探してみると意外にありそうでなく、ヴィハンQのこの音盤は以前からチェックしていたもの。水準の高いアンサンブルであることは言うまでもないが、彼らの音色が、19世紀末の爛れた濃厚な味わいを持つヴォルフの音楽に何とも相応しい。最も知名度の低い「間奏曲」の、どこか不消化で未完成感の残る断片的な旋律のそれぞれが、渋く名状し難い魅力を放っているところに、私は強く惹きつけられた。


6月4日のエントリーで、デ・サラムによるブリテンの無伴奏チェロ組曲の音盤に不良があり、最後の1トラックだけ聴けなかったことを記した。わざわざ探して買い直すほどのモチヴェーションはなかったのだが、運良く棚に並んでいるのを見つけた。一件落着。

theme : クラシック
genre : 音楽

徒然なる買い物録

  • モーツァルト:交響曲第40番、ブラームス:交響曲第1番 カラヤン/ウィーンPO (Electrecord ERT1027-2)
  • モーツァルト:弦楽四重奏曲第20番、バルトーク:弦楽四重奏曲第3番、ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第11番 ジュリアードQ (Orfeo C 927 161 B)
  • ストラヴィーンスキイ:火の鳥(1945年版)、ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 スヴェトラーノフ/ロシア国立SO (Tobu TBRCD0025-2)
  • ショスタコーヴィチ:「モスクワよ、チェリョームシキよ」(コーネル編)、ジャズ組曲第1番、ステージ・オーケストラのための組曲、タヒチ・トロット スローン/ベルリン放送SO (Capriccio 71 096)
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第1、2、5番 ボロディーンQ (Praga PRD 250 323)
  • ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第4、6、9番 ボロディーンQ (Praga PRD 250 331)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第2、7、11、12、15番 アルバン・ベルクQ (EMI DVB 3 38586 9 [DVD])
HMV ONLINEのセール品を注文するついでに、目についたものを併せていくつかオーダー。

私が聴いたことのあるカラヤンのライヴ録音はごく限られているが、いずれももの凄いテンションの名演ばかり(ショスタコーヴィチの第10番やブルックナーの第9番など)だったこともあり、「壮年期のカラヤンが、ウィーンPOと、お得意のブラ1を」と3拍子揃っている、ルーマニアのエネスコ音楽祭でのライヴ録音を、期待を持って確保。

モーツァルトは、徹底したレガートがいかにもカラヤンらしい。私の好みでは全くないが、こういう癖の強い演奏自体は嫌いでない。ただ、流麗、と言うにはあまりにも淡泊な音楽で、拍子抜け。ブラームスも、冒頭からしばらくは似たような雰囲気。ただ、オーケストレイションの厚みゆえか、オーケストラの美音はモーツァルトよりも堪能できる。

このまま「若きカラヤンの颯爽とした演奏」で終わるかと思いきや、終楽章に入った途端に表現の密度も音楽の燃焼度も別次元に。ホルンだけでなく、全ての楽器が輝いている序奏部は、筆舌に尽くし難い素晴らしさ。指揮台上の昂奮が伝わるような主部を経て、舞台も客席も一体となって盛り上がりまくるコーダに至ると、ただただ恍惚として音楽に身を委ねるのみ。これを、例えば「終楽章の終わりだけ煽ってそれらしく盛り上げただけ」のように批判することは簡単だが、しかし全く同じようにテンポや強弱を設定したところで、こうはならないことも自明。カラヤンの凄さを改めて認識させてくれる演奏である。


ジュリアードQのザルツブルク音楽祭でのライヴ録音は、渋い曲目が実に魅力的。私の世代くらいまではジュリアードQと言えば、現代音楽を得意とする厳格で鋭利な演奏スタイルの団体、みたいなイメージが強いのだが、今こうして聴いてみると、モーツァルトの緩徐楽章に聴かれるような隠しきれないロマン情緒がまるで心をくすぐるように滲み出ていることに気付く。それはバルトークでも同じで、なぜ彼らの演奏が「冷たい」と思われていたのか、そして自分も思っていたのか、不思議な気がする。

ドヴォルザークの第11番は、魅力的な楽想に溢れた逸品だが、ドヴォルザークの他の弦楽四重奏曲と同様に、いささか冗長に過ぎる。ジュリアードQは多彩な表現技術を繰り出して聴き手を飽きさせないが、それでもなお、この欠点を完全には克服できていない。演奏頻度の低い作品には、やはりそれなりの理由があるということなのだろう。


スヴェトラーノフのショスタコーヴィチ演奏には微妙な物も少なくないが、第7番に次いで相性の良さを感じさせるのが、第5番。ソ連崩壊後間もなく、旧ソ連のオーケストラの多くが奏者引き抜きなどで混乱していた時代の来日ライヴである。スヴェトラーノフという絶対的存在がいたせいか、ソ連時代と変わらぬ水準を維持し続けていたロシア国立響の音は、これぞロシアというローカル色豊かで説得力に満ちたもの。各地で幾度となく取り上げてきたであろうレパートリーだけに、アンサンブルも万全で、指揮者・奏者共にツボを心得た音楽作りが素晴らしい。ショスタコーヴィチは、他の録音と比して目立った違いはなく、最晩年にはかなり遅いテンポを採ることもあったスヴェトラーノフだが、ここではごくオーソドックスな解釈がなされている。「火の鳥」は、珍しい1945年版。「最後に出版された状態が作曲家の望んだ決定稿」という考え方のようにも思うが、単純に版権の問題だったのかもしれない。いずれにせよ、単に珍しいというだけでない、活力と貫録に満ちた秀演である。


ショスタコーヴィチの“軽い”管弦楽曲を集めたアルバムは、作曲家の生誕100年の時期にリリースされたもの。当時は、結構な量の新譜が出たことに加え、自主制作盤が増えたりしたこともあり、以降は私の蒐集ペースが極端に落ちて今に至る。21世紀に入ってからの楽器の演奏様式の変化もあってか、ショスタコーヴィチ作品の解釈も同時代的な思い入れたっぷりなものから古典作品的な扱いに変遷し始めたのも、ちょうどこの頃。本盤は、過渡期的な演奏ではあるが、整った音響とツボを押さえた盛り上がりなど、これらの楽曲のそう多くはない他の録音と比較しても十分にスタンダードたる内容である。


Pragaレーベルから、「モスクワ放送でオンエアされた1966年の録音」としてリリースされたボロディンQのショスタコーヴィチ録音は、このレーベルなので分かってはいたことだが、もしかしたらどれか1曲くらいは未発表音源が含まれているかも……という淡い期待が叶うことはなかった。第13番まで録音したところでドゥビーンスキイの亡命で完成することのなかった、彼らの“旧全集”と全て同一の音源である。無音部分を付加して、一部のトラックの収録時間を操作しているのが、何ともいやらしい。言うまでもなく、演奏そのものは異次元の素晴らしさ。




今回の目当てのセール品は、ABQによるベートーヴェンのDVD。私は彼らの熱烈なファンだが、実はこの映像の全集だけはコンプリートしていない。レーザーディスクでリリースされた2枚は、それこそ弦の種類まで真似たくらいに何度も見たが、その後続編が出ることはなく、相当な時間が経ってからDVDで一気にリリースされた時は、どうせいつでも買えるだろうと思って買いそびれていた。気がつけば、どうやら販売終了のようで、とりあえずセール品の第2巻を確保。いずれもどこかで視聴済みで、音だけのCDも持っているので、新たに何か言うべきことはないが、この映像による全集が彼らの偉業であることを再認識した。

theme : クラシック
genre : 音楽

落穂拾い(大阪)

  • シューベルト:弦楽四重奏曲第15&12番 カルミナQ (Denon COCO-80263)
  • ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13&14番 メロスQ (Intercord INT 820.536)
  • ブルックナー:弦楽五重奏曲、間奏曲 メロスQ サンチャゴ (Va) (harmonia mundi France HMC 901421)
  • ボッケリーニ:弦楽四重奏曲 Op. 58-5、ドニゼッティ:弦楽四重奏曲第13番、プッチーニ:菊、3つのメヌエット、イザイ:パガニーニ変奏曲 Quatuor Arte del Suono (Pavane ADW 7309)
  • ショスタコーヴィチ:交響曲第14番 ロジャース (S) レイフェルクス (B) アシケナージ/NHK SO (Decca UCCD-1187)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1&2番、ピアノ五重奏曲 ヘルムヒェン (Pf) ユロフスキ/ロンドンPO (London Philharmonic Orchestra LPO-0053)
  • ピアソラ:バンドネオン協奏曲、3つのタンゴ ピアソラ シフリン/セント・ルークスO (Nonesuch WPCS-5071)
深い意味もなく、私の中ではディスクユニオン=お茶の水だったのだが、よく考えてみると昨年、大阪にもクラシックの専門店がオープンしていたことを思い出し、所在地を調べて足を運んでみた。仕事帰りに音盤屋なんて、何年振りだろうか。

ということで、ディスクユニオン 大阪クラシック館に初めて突撃。帰りのバスの時間の都合で30分くらいしか時間がなかったので、とりあえず配架の構成など、店舗全体をざっと見回り、先日の東京(6月12日のエントリー)と同様、ショスタコーヴィチと室内楽にのみ集中して探索してみた。

まずは、お茶の水で確保したメロスQのアルバムと全く同じ組み合わせの、カルミナQのアルバム。1970年前後に結成された団体が私にとって弦楽四重奏のデフォルトなのだが、「その次」の世代の筆頭がカルミナQであった。デビュー盤のシマノフスキ&ヴェーベルンをリリース直後に買いに行ったのも懐かしい。その後もそれなりに新譜を追ってはいたものの、いつの間にか私の関心から外れてしまった。このシューベルトの15番に聴かれるような極端な弱音は、彼らの得意とする卓越した技術の発露であり、その前の世代とは一線を画す弦楽四重奏の響きなのだが、要するに、私はこれが好みでない、ということなのだろう。彼らの考え抜かれた音楽は、素晴らしく彫琢されていて際立って巧いが、私の思い描くシューベルトの不健康で危うい陰のある妖しい美しさとは異なる。


昨年末の中古レコード・セールで、メロスQのベートーヴェン旧全集の大半を入手したが(2月24日のエントリー)、残る2枚の内、13&14番を収録した1枚を発見。もちろん、即確保。

さすがにベートーヴェンの後期にはまだ若かったようで、真摯に取り組んでいることは十分に伝わるものの、音楽の表情が単調であることは否めない。彼らの魅力である各パートがそれぞれ自由に盛り上がりつつも一体感が終始保たれる独特の奔放さは、少なくともこの録音の段階ではあまり感じられない。


ここしばらくメロスQづいている感もあるが、ブルックナーの弦楽五重奏曲も見つけた。こちらは彼らの円熟期である1990年代の録音。冒頭から、これぞドイツ・ロマン派という響きに満ち溢れ、時に冗長さも否めない楽曲の長さが愛おしくすらある。各声部がそれぞれ思いのままに歌い込んで形成される燃焼度の高い音楽は、シンフォニックに響きつつも室内楽でしかなし得ない緊密な大柄さ、とでもいった感じ。大満足の一枚。


ボベスコといえば、私が子供の頃にヴィオッティの協奏曲の“お手本”としてLPを愛聴した思い出がある。彼女が率いる弦楽四重奏団の録音は、ヴィオッティの弦楽四重奏曲集を架蔵しているのみだが、「Rare Works for String Quartet」と題するイタリア人作曲家の作品集が目についたので、これも入手。プッチーニの「菊」以外は、全て初めて耳にした作品ばかりだが(プッチーニのメヌエットは、遊びで弾いたことはあるが)、いずれも同じ作曲家の他の作品と印象は同じで、作曲家を代表する作品が選ばれているとは言い難い。“Rare”であるには違いないが。ただし、パガニーニのカプリース第24番をイザイが弦楽四重奏にアレンジ?した作品は、非常に面白かった。いつか弾いてみたいと思って調べてみたが、楽譜は未出版の模様。録音は他にクリプトスQのものがあるようで、プロアマ問わず需要はあると思うのだが、さすがに出版は難しいか?

演奏は、1st Vn主導の古いタイプのもの。ただし、どの曲もそのスタイルがよく合っているので、とりたてて不満はない。ブリリアントな響きも心地よく、楽しいアルバムである。


アシケナージがDeccaレーベルで録音したショスタコーヴィチの交響曲は、第4、13、14番の3曲がN響との組み合わせで、それぞれ1枚物でリリースされた後、すぐに全集ボックスになってしまい、単独の音盤は入手難になってしまった。中古屋で見かけることもなかったのだが、今回、第14番を発見。

ややもっさりとしたテンポだが、それがアシケナージの指揮技術ゆえなのか、本心からの解釈なのかは判然としないものの、じっくりと奏でられた響きはなかなか美しい。N響弦セクションの底力を見せつけられた感がある。寛いだ、と言ってよいだろう独特の雰囲気は、この交響曲とは異質のはずなのだが、一方で、鋭さ一辺倒の演奏では気付くことのできない甘美さを見出させてくれる興味深い演奏である。


ロンドンPOの自主制作盤はそれなりにチェックしていたはずなのだが、ヘルムヒェンというピアニストをフィーチャーしたアルバムの存在は全く知らなかった。これがなかなかの掘り出し物である。溌剌とした勢いに満ち、それでいて終始安定感のある優れた演奏。奇を衒うことのない、ごくごくオーソドックスな解釈なのだが、間然とすることなく一気呵成に全曲を聴かせてくれる。オーケストラの、手堅くも共感に満ちた熱いバックも立派。

ピアノ五重奏曲も悪くないが、こちらはもう少し練り上げられた緊密なアンサンブルを求めたくなるのが、正直なところ。


ピアソラのバンドネオン協奏曲は、特別好きというわけでもないせいか、最も有名なスタジオ録音をずっと買いそびれていた。ふと思い出した時には廃盤になっているという、負のスパイラル。没後10年くらいまでの間にCDでリリースされた音源はほぼコンプリートしているだけに長年の懸案であったが、いざレジに向かおうと振り向いたら「目が合って」しまったので、勢いで確保。

他のライヴ録音と比べると随分と落ち着いた演奏ではあるが、たとえば最後の録音となったハジダキス指揮の録音のような技術的な問題もなく、この曲を知るには最適の音盤のように思う。ただし、オーケストラは終始ムード音楽的に和声を鳴らしているだけで、ドライヴ感に乏しいのが残念。


theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D. Tango_Piazzolla,A.

落穂拾い(東京)

  • シューベルト:弦楽四重奏曲第15&12番 メロスQ (harmonia mundi France HMA 1951409)
  • リゲティ:アトモスフェール、ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 アフカム/グスタフ・マーラー・ユーゲントO (Orfeo C 797 111 B)
  • ショスタコーヴィチ:ステパーン・ラージンの処刑、カンタータ「我が祖国に太陽は輝く」、オラトリオ「森の歌」 アンドレイエフ (T) タノヴィツキ(B) P. ヤルヴィ/エストニア国立SO、エストニア・コンサートcho、ナルヴァ少年cho (Erato 0825646166664)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番、リスト:ピアノ協奏曲第1番、プロコーフィエフ:ピアノ協奏曲第1番 ドゥ・ラ・サール (Pf) ボルドツキ (Tp) フォスター/グルベンキアン財団O (naïve V 5053)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1&2番、24の前奏曲 コロベイニコフ (Pf) ガイドゥーク (Tp) カム/ラハティSO (Mirare MIR 155)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ・ソナタ第2番、24の前奏曲 マンゴーヴァ (Pf) (Fuga Libera FUG517)
  • ブラームス:ハンガリー舞曲第5番、コヴァーチ:ユダヤの母(教育ママ)、シューベルト:ドイツ舞曲、チック・コリア:スペイン、ドリ&コヴァーチ:オリエンタル組曲、ボッケリーニ:、コヴァーチ: ボヘミアの思い出、ピアソラ: リベルタンゴ、ゴドフスキー: なつかしのウィーン、ショスタコーヴィチ:より第2番、ドリ:Tsifteteli、ロジャース:私のお気に入り、ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ホ短調、ボック:「屋根の上のヴァイオリン弾き」組曲(ロビー・ラカトシュ・ヴァージョン)、ヤーノシュカ:魅惑のダンス ザ・フィルハーモニクス (DG 002894767461)
所用で東京に行ったついでに、ディスクユニオン お茶の水クラシック館へ。時間もなかったので、弦楽四重奏とショスタコーヴィチ関連の買いそびれていた物に絞って探索。

残念ながら、弦楽四重奏は目ぼしいものが見当たらず、確保したのは1枚のみ。シューベルトの15曲中、最も好きな15番と断章のカップリングで、ここのところなぜか聴く機会の多いメロスQによるアルバムである。DGの全集ではなく、後期の第12~15番と弦楽五重奏曲をharmonia mundiレーベルに再録音したシリーズの一枚。誤解を恐れずに言えば、技術的に洗練されているとは言い難く、素人からしても突っ込みたくなるところは少なくない。にもかかわらず、武骨でありながらも人懐っこい力感のある情緒に満ちた音楽は、とても魅力的に響く。“ドイツ的”という形容がしっくりくる音の美しさといい、最良の意味での旧き佳き演奏である。残る「ロザムンデ」&「死と乙女」も、揃えておきたいところ。


残りは、全てショスタコーヴィチ作品。未架蔵の音盤があまり入荷していなかったので、目に付いたところから手当たり次第に確保。

若い指揮者とユースオーケストラとによるショスタコーヴィチの第10番は、知情意のバランスが極めて良くとれた、聴き応えのある演奏。鮮やかなアンサンブルで隅々までよく響く透明感のあるサウンドは、同時代のおどろおどろしい雰囲気を纏った演奏に親しんできた耳にはいかにも現代的だが、一方で流麗な音楽の運びから自然に立ち上る多彩な表情は、半世紀を経てこの音楽が時代の呪縛から解放されたことを感じさせてくれる。



P. ヤルヴィによるショスタコーヴィチの体制作品集は、時代と切り離すことができない、すなわち時代と共に淘汰される(=聴かれなくなる)と誰もが考えた作品を、純粋に音楽として現代においても価値のある楽曲として提示した、画期的なアルバムだろう。特筆すべきは、「我が祖国に太陽は輝く」。体制翼賛的なこけおどしの絶叫などなくても、これほどまでに満ち足りた高揚感のある音楽が成立し得ることに驚嘆した。「森の歌」も同じ路線だが、一気呵成の盛り上がりよりは、たとえば第6楽章の合唱などの静謐な美しさの方が印象に残る。この2曲に比べると、「ステパーン・ラージンの処刑」は常識的な仕上がり。作品そのものの出来のせいか、一貫したドラマトゥルギーに欠ける。


ドゥ・ラ・サールのデビュー盤は、3曲の「第1番」を集めたピアノ協奏曲集。演奏者の顔を大写しにしたアイドル風なジャケットに食指が伸びなかったが、決して力任せになることのない、コントロールの行き届いたとても綺麗な音に感心した。音楽の表情はやや単調ながらも、端正で伸びやかな音楽には好感が持てる。この音盤以降も順調に演奏活動を展開しているようだが、それも納得である。


コロベイニコフによるショスタコーヴィチのピアノ協奏曲全集は、沈潜した静的な音楽の美しさが傑出している。両曲とも、かなり遅いテンポでじっくりと弾き込んだ第2楽章が素晴らしい。一方で、速い楽章も同様の雰囲気をとっているため、やみくもな疾走感に欠ける点は好き嫌いが分かれるかもしれない。第2番第1楽章のカデンツァ以降には、充実した高揚感があり、これはコロベイニコフの解釈なのだろう。24の前奏曲は、1月26日のエントリーで紹介した「ロシア・ソ連の作曲家によるピアノ音楽のアンソロジー第1集」にも彼の演奏が収録されており、収録年も同一であるが、これとは別の演奏である。本盤の方が残響が豊かで静謐感のある録音のせいか、協奏曲と同様に沈思黙考するような響きの美しさが際立つ。


ベルギーのエリザベート音楽院出身の若手演奏家であるマンゴーヴァのデビュー盤。安定した技術と模範的な解釈は、演奏家の豊かな才能の片鱗を感じさせる。いたずらに飾り立てることなく素直に淡々と音を連ねることで作品の雰囲気を自然に表出したソナタ第2番、流麗に多彩な表情を繰り広げる前奏曲、共に聴き応えのある充実した演奏である。


「2006年のウィーン・フィル日本公演の際、リーダーのコヴァーチとコントラバスのラーツが福岡でしゃぶしゃぶを食べながら意気投合。その後メンバーを厳選し、2007年より活動を開始した“ノー・リミット・アンサンブル”」(ユニバーサルミュージックの公式プロフィールhttp://www.universal-music.co.jp/the-philharmonics/biography/より)である、ザ・フィルハーモニクス。颯爽とした格好良さの漂う音楽は、宣伝文句通り、上質のエンターテイメント。アンドレ・リュウとは全く別のテイストを持った「第二ワルツ」は、個々の奏者のセンスの良さが随所に感じられる楽しい演奏である。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

雑多な買い物録

  • シューマン:歌曲集「詩人の恋」、ベートーヴェン:君を愛す、アデライーデ、諦め、くちづけ、シューベルト:シルヴィアに、双子座の星に寄せる舟人の歌、変貌自在な恋する男、孤独な男、夕映えの中で、セレナーデ、リュートに寄せて、ミューズの子、音楽に寄せて ヴンダーリヒ (T) ギーゼン (Pf) (DG 429 933-2)
  • ラフマニノフ:交響曲第2番、ホルスト:惑星 カヒーゼ/トビリシSO (Cugate Classics CGC001-2)
  • フランセ:室内楽傑作選 フランセ (Pf・指揮)フランス八重奏団 (Indésens INDE043)
  • フレーンニコフ:喜歌劇「100の悪魔とたった一人の少女」 オソーフスキイ/モスクワ・オペレッタ劇場O & cho. (Melodiya CM 04063-6 [LP])
  • ファルカス:17世紀の古いハンガリー舞曲集、モーツァルト(ヴァイゲルト編):アダージョ KV411、バルテ:パッサカリア、ショスタコーヴィチ(スミス編):バレエ「黄金時代」よりポルカ、ドビュッシー(デイヴィス編):「子供の領分」より「ゴリウォーグのケークウォーク 」、K. シュターミッツ(ヴァイゲルト編):木管四重奏曲、モーツァルト(フェステル編):小さなオルガンのためのアンダンテ KV616、ドビュッシー(デイヴィス編):「小組曲」より3つの楽章、リームスキイ=コールサコフ(デイヴィス編):熊蜂の飛行 アルビオン・アンサンブル (Senol Printing Limited SNH 501 [LP])
  • ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1~3番 デ・サラム (Vc) (Disques Montaigne MO 782081)
  • 留守key:スラーヴァ!ロシア音楽物語: グリンカからショスタコーヴィチへ, 学研プラス, 2017.
大した量ではないが、ここ3ヶ月ほどで入手した音盤のまとめ。

ちょっとした外食の際、順番待ちの時間潰しがてら隣接しているBOOKOFF西宮建石店を覗いてみた。500円の値付けがされているCDに限ってセールをしていたので、さしたる期待もせずに中古の廉価盤や編集盤の並ぶ棚を眺めていると、ヴンダーリヒの「詩人の恋」を発見。これは1990年代前半の学生時代に、「美しき水車小屋の娘」と一緒にリリースされたもの。親しい先輩の下宿で聴いてシューベルトはすぐに購入したのだが、シューマンの方は買いそびれたままになっていた。もちろん、即確保。

声の美しさだけでノックアウトされてしまいそうになるが、若々しく青臭い感傷が滲むニュアンス豊かな歌唱も極めて素晴らしい。ピアノも、シューマンの魅力を余すところなく表出しつつ、それでいて歌に繊細に寄り添う様が名人芸としか言いようがない。さすがに他の掘り出し物はなかったが、外食に出かけた元は十分に取れた。


アリアCDで、『ジャンスク・カヒーゼの遺産』シリーズがまとめて紹介されていたので、試しに曲の好みでラフマニノフの交響曲第2番が入った一枚を(と言っても2枚組だが)。いわゆる“爆演”型の指揮者に対する関心は年齢と共に低くなったのだが、ここのところ室内楽ばかり聴いている気がするので、気分転換的な意図もあったし、協奏曲の伴奏では数曲ほど聴いたことがあるものの、マニアの間で評価の高い指揮者の本領を聴いておきたかった、ということもある。

一定の期待を持って聴いてみたが、率直に言って肩透かしを食らった感じ。アンサンブルに気を配りながらも全編に渡って覇気が漲り、臆面もなく旋律を歌い込むスタイルは、確かに私の好みに合致しているのだが、それほど突き抜けた個性は感じられず、むしろ常識的な音楽であるように思われる。オーケストラの精度も冴えないせいか、指揮者の解釈が正統的なラフマニノフはともかく、指揮者とオーケストラとの間がどこか空回りしているような「惑星」は、ただただ物足りなかった。こうなると、個性的な節回しも単に奇を衒っているようにしか聴こえない。

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フランセに若書きの弦楽四重奏曲があることを知り、調べてみたところ、すぐに辿り着く範囲で見つけたフランス八重奏団によるセット物を、HMV ONLINEで購入。収録内容は以下の通り:
Disque I
弦楽四重奏曲
ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ
主題と変奏 ~クラリネットとピアノのための
ディヴェルティスマン ~ピアノと弦楽三重奏のための
Disque II
十重奏曲 ~弦楽五重奏と木管五重奏のための
8つのバガテル ~ピアノと弦楽四重奏のための
モーツァルトの五重奏曲 KV 452にもとづく九重奏曲 ~オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと弦楽五重奏のための
Disque III
八重奏曲 ~クラリネット、ホルン、ファゴットと弦楽五重奏のための
ディヴェルティスマン ~ファゴットと弦楽五重奏のための
クラリネット五重奏曲 ~クラリネットと弦楽四重奏のための
羊飼いのひととき、またはブラッスリーの音楽 ~ピアノと弦楽五重奏のための

さすがに全てが名作・傑作だとまで言うつもりはないが、目当ての弦楽四重奏曲をはじめ、いずれも気の利いた雰囲気のある響きが楽しいアルバムであった。特に、モーツァルトのピアノと管楽器のための五重奏曲の編曲は極めて素晴らしく、モーツァルトのオリジナルをさらに魅力的にした稀有のアレンジにただひたすら感嘆した。

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Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.から届いた2枚は、コレクションの穴埋め的なもの。フレーンニコフのオペレッタは、暴力的に騒々しくも、恥ずかしげのない歌謡旋律が耳に残る、いかにも社会主義リアリズムのお手本のような作品。ヤケクソのような劇場オーケストラの演奏が堪らなく雰囲気満点。


アルビオン・アンサンブルというイギリスの団体は初めて聴いたが、手堅くも心地好い演奏をする実力派のアンサンブルである。収録曲も多彩で、木管五重奏の魅力を十二分に味わうことができる。


子供に頼まれてAmazonで買い物をしたついでに、かなり前にチェックしていたものの長らく買いそびれていた一枚を購入した。ブリテンの無伴奏チェロ組曲は、被献呈者であるロストロポーヴィチの音盤だけを架蔵しており、それだけで十分に満足しているのだが、ロストロポーヴィチは第3番を録音していないために、全3曲をまとめて聴きたいとかねがね思っていたところ見つけたのが、アルディッティQのチェリスト、デ・サラムの音盤。HMV ONLINEのウィッシュリストに入れておいたのだが、販売終了になって久しく、思い立ったが吉日ということでこの機会にオーダー。

高い精度で淡々と奏でられる音楽は、ブリテン独特の不健康な透明感に満ちていて、とにかく美しい。アルディッティQを勇退する数年前の録音であることもあってか、鋭利さよりは抒情的な丸みが勝るものの、老成よりはむしろ若々しさを感じさせる引き締まった音楽の運びが個性的であると同時に、この作品の音楽世界によく合致している。

運の悪いことに、購入したディスクには最後のトラックが再生できない不良があり(盤面に傷はないので、おそらく初期不良)、その1トラックのためだけに買い直すかどうか悩ましいところ。


書店の音楽書のコーナーに、ロシアの有名作曲家を題材にした漫画が平積みになっていた。発売前に新刊情報は知っていたのだが、てっきり各人の伝記漫画かと思っていたら、さにあらず。それぞれの作曲家人生を象徴、代表するようなエピソードを取り上げ、それに限って話が構成されている。いたずらに生涯を万遍なく描くよりはよほど面白い。至って真面目な内容だが、もちろん学術的な正確性に拘泥して漫画としての流れを損なっているわけでもなく、ロシア音楽に詳しくない人からマニアまで広く楽しめるだろう。

ショスタコーヴィチは交響曲第5番にまつわる話だったが、終楽章コーダのA音を“チューニング”だとする解釈は面白かった。あんな音域でチューニングしろと言われたら、たまったものではないが。

theme : クラシック
genre : 音楽

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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