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落穂拾い(東京)

  • シューベルト:弦楽四重奏曲第15&12番 メロスQ (harmonia mundi France HMA 1951409)
  • リゲティ:アトモスフェール、ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 アフカム/グスタフ・マーラー・ユーゲントO (Orfeo C 797 111 B)
  • ショスタコーヴィチ:ステパーン・ラージンの処刑、カンタータ「我が祖国に太陽は輝く」、オラトリオ「森の歌」 アンドレイエフ (T) タノヴィツキ(B) P. ヤルヴィ/エストニア国立SO、エストニア・コンサートcho、ナルヴァ少年cho (Erato 0825646166664)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番、リスト:ピアノ協奏曲第1番、プロコーフィエフ:ピアノ協奏曲第1番 ドゥ・ラ・サール (Pf) ボルドツキ (Tp) フォスター/グルベンキアン財団O (naïve V 5053)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1&2番、24の前奏曲 コロベイニコフ (Pf) ガイドゥーク (Tp) カム/ラハティSO (Mirare MIR 155)
  • ショスタコーヴィチ:ピアノ・ソナタ第2番、24の前奏曲 マンゴーヴァ (Pf) (Fuga Libera FUG517)
  • ブラームス:ハンガリー舞曲第5番、コヴァーチ:ユダヤの母(教育ママ)、シューベルト:ドイツ舞曲、チック・コリア:スペイン、ドリ&コヴァーチ:オリエンタル組曲、ボッケリーニ:、コヴァーチ: ボヘミアの思い出、ピアソラ: リベルタンゴ、ゴドフスキー: なつかしのウィーン、ショスタコーヴィチ:より第2番、ドリ:Tsifteteli、ロジャース:私のお気に入り、ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ホ短調、ボック:「屋根の上のヴァイオリン弾き」組曲(ロビー・ラカトシュ・ヴァージョン)、ヤーノシュカ:魅惑のダンス ザ・フィルハーモニクス (DG 002894767461)
所用で東京に行ったついでに、ディスクユニオン お茶の水クラシック館へ。時間もなかったので、弦楽四重奏とショスタコーヴィチ関連の買いそびれていた物に絞って探索。

残念ながら、弦楽四重奏は目ぼしいものが見当たらず、確保したのは1枚のみ。シューベルトの15曲中、最も好きな15番と断章のカップリングで、ここのところなぜか聴く機会の多いメロスQによるアルバムである。DGの全集ではなく、後期の第12~15番と弦楽五重奏曲をharmonia mundiレーベルに再録音したシリーズの一枚。誤解を恐れずに言えば、技術的に洗練されているとは言い難く、素人からしても突っ込みたくなるところは少なくない。にもかかわらず、武骨でありながらも人懐っこい力感のある情緒に満ちた音楽は、とても魅力的に響く。“ドイツ的”という形容がしっくりくる音の美しさといい、最良の意味での旧き佳き演奏である。残る「ロザムンデ」&「死と乙女」も、揃えておきたいところ。


残りは、全てショスタコーヴィチ作品。未架蔵の音盤があまり入荷していなかったので、目に付いたところから手当たり次第に確保。

若い指揮者とユースオーケストラとによるショスタコーヴィチの第10番は、知情意のバランスが極めて良くとれた、聴き応えのある演奏。鮮やかなアンサンブルで隅々までよく響く透明感のあるサウンドは、同時代のおどろおどろしい雰囲気を纏った演奏に親しんできた耳にはいかにも現代的だが、一方で流麗な音楽の運びから自然に立ち上る多彩な表情は、半世紀を経てこの音楽が時代の呪縛から解放されたことを感じさせてくれる。



P. ヤルヴィによるショスタコーヴィチの体制作品集は、時代と切り離すことができない、すなわち時代と共に淘汰される(=聴かれなくなる)と誰もが考えた作品を、純粋に音楽として現代においても価値のある楽曲として提示した、画期的なアルバムだろう。特筆すべきは、「我が祖国に太陽は輝く」。体制翼賛的なこけおどしの絶叫などなくても、これほどまでに満ち足りた高揚感のある音楽が成立し得ることに驚嘆した。「森の歌」も同じ路線だが、一気呵成の盛り上がりよりは、たとえば第6楽章の合唱などの静謐な美しさの方が印象に残る。この2曲に比べると、「ステパーン・ラージンの処刑」は常識的な仕上がり。作品そのものの出来のせいか、一貫したドラマトゥルギーに欠ける。


ドゥ・ラ・サールのデビュー盤は、3曲の「第1番」を集めたピアノ協奏曲集。演奏者の顔を大写しにしたアイドル風なジャケットに食指が伸びなかったが、決して力任せになることのない、コントロールの行き届いたとても綺麗な音に感心した。音楽の表情はやや単調ながらも、端正で伸びやかな音楽には好感が持てる。この音盤以降も順調に演奏活動を展開しているようだが、それも納得である。


コロベイニコフによるショスタコーヴィチのピアノ協奏曲全集は、沈潜した静的な音楽の美しさが傑出している。両曲とも、かなり遅いテンポでじっくりと弾き込んだ第2楽章が素晴らしい。一方で、速い楽章も同様の雰囲気をとっているため、やみくもな疾走感に欠ける点は好き嫌いが分かれるかもしれない。第2番第1楽章のカデンツァ以降には、充実した高揚感があり、これはコロベイニコフの解釈なのだろう。24の前奏曲は、1月26日のエントリーで紹介した「ロシア・ソ連の作曲家によるピアノ音楽のアンソロジー第1集」にも彼の演奏が収録されており、収録年も同一であるが、これとは別の演奏である。本盤の方が残響が豊かで静謐感のある録音のせいか、協奏曲と同様に沈思黙考するような響きの美しさが際立つ。


ベルギーのエリザベート音楽院出身の若手演奏家であるマンゴーヴァのデビュー盤。安定した技術と模範的な解釈は、演奏家の豊かな才能の片鱗を感じさせる。いたずらに飾り立てることなく素直に淡々と音を連ねることで作品の雰囲気を自然に表出したソナタ第2番、流麗に多彩な表情を繰り広げる前奏曲、共に聴き応えのある充実した演奏である。


「2006年のウィーン・フィル日本公演の際、リーダーのコヴァーチとコントラバスのラーツが福岡でしゃぶしゃぶを食べながら意気投合。その後メンバーを厳選し、2007年より活動を開始した“ノー・リミット・アンサンブル”」(ユニバーサルミュージックの公式プロフィールhttp://www.universal-music.co.jp/the-philharmonics/biography/より)である、ザ・フィルハーモニクス。颯爽とした格好良さの漂う音楽は、宣伝文句通り、上質のエンターテイメント。アンドレ・リュウとは全く別のテイストを持った「第二ワルツ」は、個々の奏者のセンスの良さが随所に感じられる楽しい演奏である。

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Shostakovich,D.D.

雑多な買い物録

  • シューマン:歌曲集「詩人の恋」、ベートーヴェン:君を愛す、アデライーデ、諦め、くちづけ、シューベルト:シルヴィアに、双子座の星に寄せる舟人の歌、変貌自在な恋する男、孤独な男、夕映えの中で、セレナーデ、リュートに寄せて、ミューズの子、音楽に寄せて ヴンダーリヒ (T) ギーゼン (Pf) (DG 429 933-2)
  • ラフマニノフ:交響曲第2番、ホルスト:惑星 カヒーゼ/トビリシSO (Cugate Classics CGC001-2)
  • フランセ:室内楽傑作選 フランセ (Pf・指揮)フランス八重奏団 (Indésens INDE043)
  • フレーンニコフ:喜歌劇「100の悪魔とたった一人の少女」 オソーフスキイ/モスクワ・オペレッタ劇場O & cho. (Melodiya CM 04063-6 [LP])
  • ファルカス:17世紀の古いハンガリー舞曲集、モーツァルト(ヴァイゲルト編):アダージョ KV411、バルテ:パッサカリア、ショスタコーヴィチ(スミス編):バレエ「黄金時代」よりポルカ、ドビュッシー(デイヴィス編):「子供の領分」より「ゴリウォーグのケークウォーク 」、K. シュターミッツ(ヴァイゲルト編):木管四重奏曲、モーツァルト(フェステル編):小さなオルガンのためのアンダンテ KV616、ドビュッシー(デイヴィス編):「小組曲」より3つの楽章、リームスキイ=コールサコフ(デイヴィス編):熊蜂の飛行 アルビオン・アンサンブル (Senol Printing Limited SNH 501 [LP])
  • ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1~3番 デ・サラム (Vc) (Disques Montaigne MO 782081)
  • 留守key:スラーヴァ!ロシア音楽物語: グリンカからショスタコーヴィチへ, 学研プラス, 2017.
大した量ではないが、ここ3ヶ月ほどで入手した音盤のまとめ。

ちょっとした外食の際、順番待ちの時間潰しがてら隣接しているBOOKOFF西宮建石店を覗いてみた。500円の値付けがされているCDに限ってセールをしていたので、さしたる期待もせずに中古の廉価盤や編集盤の並ぶ棚を眺めていると、ヴンダーリヒの「詩人の恋」を発見。これは1990年代前半の学生時代に、「美しき水車小屋の娘」と一緒にリリースされたもの。親しい先輩の下宿で聴いてシューベルトはすぐに購入したのだが、シューマンの方は買いそびれたままになっていた。もちろん、即確保。

声の美しさだけでノックアウトされてしまいそうになるが、若々しく青臭い感傷が滲むニュアンス豊かな歌唱も極めて素晴らしい。ピアノも、シューマンの魅力を余すところなく表出しつつ、それでいて歌に繊細に寄り添う様が名人芸としか言いようがない。さすがに他の掘り出し物はなかったが、外食に出かけた元は十分に取れた。


アリアCDで、『ジャンスク・カヒーゼの遺産』シリーズがまとめて紹介されていたので、試しに曲の好みでラフマニノフの交響曲第2番が入った一枚を(と言っても2枚組だが)。いわゆる“爆演”型の指揮者に対する関心は年齢と共に低くなったのだが、ここのところ室内楽ばかり聴いている気がするので、気分転換的な意図もあったし、協奏曲の伴奏では数曲ほど聴いたことがあるものの、マニアの間で評価の高い指揮者の本領を聴いておきたかった、ということもある。

一定の期待を持って聴いてみたが、率直に言って肩透かしを食らった感じ。アンサンブルに気を配りながらも全編に渡って覇気が漲り、臆面もなく旋律を歌い込むスタイルは、確かに私の好みに合致しているのだが、それほど突き抜けた個性は感じられず、むしろ常識的な音楽であるように思われる。オーケストラの精度も冴えないせいか、指揮者の解釈が正統的なラフマニノフはともかく、指揮者とオーケストラとの間がどこか空回りしているような「惑星」は、ただただ物足りなかった。こうなると、個性的な節回しも単に奇を衒っているようにしか聴こえない。

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フランセに若書きの弦楽四重奏曲があることを知り、調べてみたところ、すぐに辿り着く範囲で見つけたフランス八重奏団によるセット物を、HMV ONLINEで購入。収録内容は以下の通り:
Disque I
弦楽四重奏曲
ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ
主題と変奏 ~クラリネットとピアノのための
ディヴェルティスマン ~ピアノと弦楽三重奏のための
Disque II
十重奏曲 ~弦楽五重奏と木管五重奏のための
8つのバガテル ~ピアノと弦楽四重奏のための
モーツァルトの五重奏曲 KV 452にもとづく九重奏曲 ~オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットと弦楽五重奏のための
Disque III
八重奏曲 ~クラリネット、ホルン、ファゴットと弦楽五重奏のための
ディヴェルティスマン ~ファゴットと弦楽五重奏のための
クラリネット五重奏曲 ~クラリネットと弦楽四重奏のための
羊飼いのひととき、またはブラッスリーの音楽 ~ピアノと弦楽五重奏のための

さすがに全てが名作・傑作だとまで言うつもりはないが、目当ての弦楽四重奏曲をはじめ、いずれも気の利いた雰囲気のある響きが楽しいアルバムであった。特に、モーツァルトのピアノと管楽器のための五重奏曲の編曲は極めて素晴らしく、モーツァルトのオリジナルをさらに魅力的にした稀有のアレンジにただひたすら感嘆した。

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Ars Antiqua / Mikrokosmos Mail Order Co.から届いた2枚は、コレクションの穴埋め的なもの。フレーンニコフのオペレッタは、暴力的に騒々しくも、恥ずかしげのない歌謡旋律が耳に残る、いかにも社会主義リアリズムのお手本のような作品。ヤケクソのような劇場オーケストラの演奏が堪らなく雰囲気満点。


アルビオン・アンサンブルというイギリスの団体は初めて聴いたが、手堅くも心地好い演奏をする実力派のアンサンブルである。収録曲も多彩で、木管五重奏の魅力を十二分に味わうことができる。


子供に頼まれてAmazonで買い物をしたついでに、かなり前にチェックしていたものの長らく買いそびれていた一枚を購入した。ブリテンの無伴奏チェロ組曲は、被献呈者であるロストロポーヴィチの音盤だけを架蔵しており、それだけで十分に満足しているのだが、ロストロポーヴィチは第3番を録音していないために、全3曲をまとめて聴きたいとかねがね思っていたところ見つけたのが、アルディッティQのチェリスト、デ・サラムの音盤。HMV ONLINEのウィッシュリストに入れておいたのだが、販売終了になって久しく、思い立ったが吉日ということでこの機会にオーダー。

高い精度で淡々と奏でられる音楽は、ブリテン独特の不健康な透明感に満ちていて、とにかく美しい。アルディッティQを勇退する数年前の録音であることもあってか、鋭利さよりは抒情的な丸みが勝るものの、老成よりはむしろ若々しさを感じさせる引き締まった音楽の運びが個性的であると同時に、この作品の音楽世界によく合致している。

運の悪いことに、購入したディスクには最後のトラックが再生できない不良があり(盤面に傷はないので、おそらく初期不良)、その1トラックのためだけに買い直すかどうか悩ましいところ。


書店の音楽書のコーナーに、ロシアの有名作曲家を題材にした漫画が平積みになっていた。発売前に新刊情報は知っていたのだが、てっきり各人の伝記漫画かと思っていたら、さにあらず。それぞれの作曲家人生を象徴、代表するようなエピソードを取り上げ、それに限って話が構成されている。いたずらに生涯を万遍なく描くよりはよほど面白い。至って真面目な内容だが、もちろん学術的な正確性に拘泥して漫画としての流れを損なっているわけでもなく、ロシア音楽に詳しくない人からマニアまで広く楽しめるだろう。

ショスタコーヴィチは交響曲第5番にまつわる話だったが、終楽章コーダのA音を“チューニング”だとする解釈は面白かった。あんな音域でチューニングしろと言われたら、たまったものではないが。

theme : クラシック
genre : 音楽

【楽曲解説】モーツァルト:弦楽四重奏曲第3番

Wolfgang Amadeus Mozart
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)


Streichquartett Nr. 3 G-dur, KV 156 (134b)
弦楽四重奏曲第3番 ト長調 KV 156 (134b)



 「あの子(ヴォルフガング)は今、退屈なので四重奏曲を書いています」(1772年10月28日)と父レオポルドが手紙に記しているように、3回目のイタリア旅行中であった16歳のモーツァルトが退屈しのぎに書いたとされる6曲の弦楽四重奏曲が、いわゆる「ミラノ四重奏曲」(第2~7番)です。いずれも「急・緩・急」の典型的なイタリア風の3楽章形式を採っていて、全体としては前古典派の雰囲気を色濃く残しています。当時はまだ四重奏=4人の奏者では必ずしもなく、各パートの人数は自由なものでした。しかし、この第3番でモーツァルトは初めてソロ編成、すなわち4人の奏者による演奏を指定しました。また、短調で書かれた中間楽章の暗く情熱的な感情表現は、時代を大きく先取りしたものです。なお、最初に書かれた中間楽章は父レオポルドによって「聴衆に合わない難しい曲」だとされ、書き直されました。本日演奏するのは、この「第2稿」です。


シュペーテ弦楽四重奏団 チャリティーコンサート2016(2016年10月22日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Mozart,W.A. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【楽曲解説】ボッケリーニ:弦楽四重奏曲 G.170

Luigi Rodolfo Boccherini
ルイジ・ボッケリーニ(1743~1805)


Quartetto per archi in la maggiore, G.170
弦楽四重奏曲 イ長調 G.170



 イタリア生まれの作曲家ボッケリーニは、ハイドン(1732年生)やモーツァルト(1756年生)と同時代を生きた古典派の作曲家です。チェロの名手として知られ、ウィーンの宮廷でも活躍しましたが、その後マドリッドの宮廷に招かれて後半生を過ごすことになります。自身が得意としたチェロを含む室内楽の分野、とりわけ、それぞれ100曲を超えるとも言われる弦楽五重奏曲や弦楽四重奏曲などにその手腕を遺憾なく発揮しました。当時の音楽界の中心であったウィーンから離れた地にいたせいか、ハイドンなどが志向したソナタ形式などの構造的な手法よりも、リズムや和声、旋律の感覚的な楽しさを前面に押し出した情緒的な作風で、ウィーン古典派とは異なる経路でバロックとロマン派との橋渡しを務めたともいえるでしょう。マドリッドに渡った1769年に発表された作品8(出版社によっては作品6とされることもある)の6曲は、ハイドンの作品9、モーツァルトの第1番と同時期の弦楽四重奏曲ですが、四声の対等な扱いという点では抜きん出て先進的な作品群です。本日は、この作品8の第6曲から第3楽章のみを演奏いたします。輝かしくも愉悦に満ちた音の奔流は、ボッケリーニの真骨頂です。


シュペーテ弦楽四重奏団 チャリティーコンサート2016(2016年10月22日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Boccherini,L. 演奏活動_DasSpäteQuartett

【楽曲解説】ブラームス:弦楽四重奏曲第2番

Johannes Brahms
ヨハネス・ブラームス(1833~1897)


Streichquartett Nr. 2 a-moll, Op. 51-2
弦楽四重奏曲第2番 イ短調 作品51-2



 2曲の弦楽六重奏曲などの成功によって既に室内楽の大家として名声を確立していたブラームスが最初の弦楽四重奏曲を発表したのは、40歳の時でした。作品51の2曲に至るまで最低でも8年の歳月をかけ、それ以前に破棄された習作は20曲にも及ぶと伝えられます。このことは、43歳の時に発表された交響曲第1番(作品68)と同様に、弦楽四重奏曲と交響曲において巨大な成果を残したベートーヴェンに対する畏敬の念ゆえの艱難辛苦と言われています。とはいえ、ブラームスの弦楽四重奏曲は、シューマンの弦楽四重奏曲(作品41)の後継にして完成形とでも評価すべき真にロマン派的な作品で、主題労作や対位法へのこだわりは、むしろハイドンを想起させます(ちなみに「ハイドンの主題による変奏曲 作品56」は、作品51と同じ1873年に完成しています)。また、友人のヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒム(1831~1907)が1869年から自身の名を冠した四重奏団を結成して活躍していたことも、シューマンにおけるフェルディナンド・ダヴィッド(1810~1873)の存在と同じく、ブラームスの弦楽四重奏曲に対する関心に大きく影響したと思われます。
 第2番は深い憂愁を秘めた抒情的な作品で、劇的な第1番と対をなしています。第1楽章冒頭の第1主題「A-F-A-E」には、ヨアヒムの有名なモットー「Frei Aber Einsam(自由だが孤独だ)」が織り込まれていて、楽章を通じてこの動機が用いられます。第2楽章の美しい旋律も、シェーンベルクが例に挙げて称賛したほど作曲技法的に緻密な構成を持っています。「Quasi Minuetto(ほぼメヌエット)」と記された第3楽章は、三部形式の舞曲であることは確かですが、「メヌエットの亡霊」のようなロマン派的情緒が印象的です。中間部の経過句には、トリオの主題(Vn1&Va)とメヌエットの主題(Vn2&Vc)とを組み合わせた二重カノンが挿入されます。終楽章は、暗い情熱を湛えたハンガリー風のロンド。第2楽章中間部の劇的なレチタティーヴォ風の音楽(Vn1とVcのカノン)と呼応しています。全編に渡る対位法的書法と分厚い和声がいかにもブラームスらしい、名作です。

シュペーテ弦楽四重奏団 第7回公演(2017年4月22, 29日)

theme : クラシック
genre : 音楽

tag : 作曲家_Brahms,J. 演奏活動_DasSpäteQuartett

プロフィール

Yosuke Kudo

Author:Yosuke Kudo
B. モンサンジョン著『リヒテル』(筑摩書房, 2000)に、「音楽をめぐる手帳」という章がある。演奏会や録音などを聴いて思ったことを日記風に綴ったもので、実に面白い。

毎日のように音楽を聴いているにもかかわらず、その印象が希薄になる一方であることへの反省から、リヒテルに倣ってここに私も覚え書きを記しておくことにする。無論、リヒテルの深みに対抗しようなどという不遜な気持はない。あくまでも自分自身のために、誰に意見するわけでもなく、思いついたことをただ書きなぐるだけのことである。

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